「何処行こっか」
「何処でも!」
「はは、名前はいつもそれだな」
だって、本当に何処でもいいんだもの。2人でいれるなら。ドライブの時って、ずっと2人だけの時間みたいで好き。白い車で颯爽と走る理一さんも素敵だけど、ヘルメット被ってバイクを操る理一さんのが好き。くっついてられるから。とりあえずドライブは、普段の優しい顔だけじゃなくて、キリッとした顔も見られるから好き。
バイクに乗る時は、必ずわたしを子供みたいに持ち上げて後ろに乗せてくれる。理一さんにとったら、わたしもまだまだ子供か。そんなことを思うけど、子供扱いされるのも嫌いじゃない。わたしを1人の女の子として見てくれてるのが分かってるから。
「理一さん」
「ん?」
「すき」
「…運転中にそういうこと言うなよ」
後ろからだからよく分かんないけど、理一さんも照れてるみたいだった。なーんか嬉しくて体に回す手に力を込めた。理一さん、普段は余裕綽々って感じで、わたしが遊ばれちゃうことのが多いんだけど、こういう不意打ちの照れはとても嬉しい。というかおいしい?今、わたしの胸は満足感で満ち足りている。って、言葉が変だな、ま、いっか。あーどうしよ、他の運転手さんに見られたら変な子って思われちゃう。多分今顔にやけてる。別にわたしだけが変に思われるのは構わないけど、一緒にいる理一さんまで同じように思われてしまうのは不本意だ。ので、必死ににやけを抑え込む。どうか誰にもバレていませんように!
段々と人通りの少ない道に入っていって、青々と茂った緑の下を通り抜けていく。木漏れ日がきらきらと光ってわたし達を映していくのを綺麗だと思った。そういえば、今までドライブしてきた中で一番長いような…
「はい着いたよ」
「此処は…」
「俺の実家。早く大家族に慣れてもらおうと思って」
理一さんの親戚は毎年殆どの親族が本家に集まる程繋がりが濃くて大きいことは本人から聞いた。でも、そんな中にわたしなんかが入っちゃっていいの…?
「丁度今日から夏希達来てるし、タイミング良いかなと思ったんだけど…気に入らなかった?」
「いや、滅相もない!」
「そ、良かった。数日間泊まってくといいよ。遠いし、それに慣れるだろうし」
「でもお泊まりセット持ってな…あっ」
しまった、口を滑らせてしまったかもしれない。いや、でもお泊まりとか言い始めたのは理一さんだし、そういうの心配するのは当たり前のことで…でも普通恋人の前でお泊まりセットとか言う!?これじゃあわたし、気があるみたいじゃない…って気がない訳じゃないんだけどがっつりとか思われたら嫌だし…
「焦らなくていいよ。必要な物あれば買いに行けばいい。それくらいは俺出すから。そもそも勝手に連れてきたのは俺だし」
「…うん、ありがとう」
今まであれこれ考えてたのが馬鹿みたいで1人気恥ずかしくなった。でも、夏希がいるのは心強い。知らない環境には1人でも多くの知った顔がいると安心するからね。
「名前来てたの!わーい嬉しいっ!」
「あれ、健二くん…?」
「どうも〜」
玄関の方から夏希が走って出てきたと思ったら後ろの方から健二くんがいつもの笑顔で歩いてきた。夏希がいつも健二くんっていうからその話を聞いているわたしまですっかり板についてきちゃったみたい。怪訝そうな顔はされてないから多分大丈夫。
「もしかして健二くんもう認められてる?」
「はい、まぁそんな感じで」
「凄い!というか余所者1人じゃなくて良かったよー健二くんー!」
「名前、みんなに挨拶行こっか」
「うん!そういえばキングカズマの人いるんだよね!?会ってみたい!」
「はいはい」
夏希と健二くんと別れる前に後で名前の買い物付き合ってやってと頼んでくれる理一さんはやっぱりかっこいい。
街と緑のその向こう
あとがき