「名前、付き合ってほしい」

「え…?」


 放課後、体育館に呼び出されたわたしは、この状況をよくわかっていなかった。成績優秀、はっきり言ってスポーツはてんで駄目な高木くんに、告白をされた。此処(ゴールからそれなりに離れている)からゴールにボールが入ったら付き合ってほしい。わたしはその条件を飲み込んだ訳ではないのだが、彼はやる気満々で、そして、ボールを投げた。


「あっ」

「くそっ」



 やっぱり無理あったかー、駄目かもとは思ったんだよなーくそ、無謀なことに挑戦するのは無茶だったかー。
 そんな風に独り言を言う彼を呆然と見つめていた。でも、何でいきなり?わたしなんかを好きになって?しかもどうしてバスケのシュートなの?もしかして自分がシュートって呼ばれてるから?


「失敗しちゃったけど…駄目かな?」

「……もう少し考えさせてほしい」

「だよな、いきなりすぎるよな。ごめんな」


 じゃあ良い返事を期待してるから!そう言って彼はその場から去った。勿論、告白自体は嬉しかった。けれど、わたしは彼のことが好きかと言われたらそれはよくわからなくて中途半端な気持ちで付き合うのは彼に申し訳ない。逃げるように帰って行った高木くんも、きっと気持ちが焦っていたんじゃないかな。

 家に帰って毛布被っても頭の中は高木くんのことばかり。だって、告白なんて初めてだもの。今更になって思い出して真っ赤になって。わたし、ちゃんとお返事できるのかな…。


*****


「シュージンに告白されたんだろ?」

「え、…うん」


 次の日、高木くんと仲が良い真城くんに屋上に呼び出され何かと思ったらそんなことの確認だった。


「なんて、返事したの?」

「まだ、してない…」


 仲が良いから聞いているのかと思ったけどそうではなかったらしい。男子は女子とは違って、何でもかんでも報告したりしないのかもしれない。というか、そんな気がする、だけなのだけど。


「好きだ」

「…え」

「俺は、苗字さんが好きだ」


 付き合ってほしい。そうやって、二人してわたしを困らせるのか。なんて思って真城くんを見たら「シュージンは関係ないから。あいつが告白しててもしてなくても、俺は俺で苗字さんに告白するつもりだったから」なんて。


「困らせてごめんな。きっと今はいっぱいいっぱいだろうから、答えはまた今度でいいから」


 そう言って、真城くんも高木くんと同じように屋上を出て行った。真城くんは多分違う、告白して緊張とかじゃない。純粋に、わたしが高木くんの答えを保留したのを聞いて、そうしたんだろう。1人保留で次を答えるなんてことはないから。

 また布団に入って考えた。今日は真城くんと高木くんの2人についてだ。ねえ、どうしたらいい?告白なんてされちゃったらもう只のクラスメートには見えないじゃない。今までと同じようになんか出来ないじゃない。
 ああ、どうすればいい?

 仲の良い友達に相談してみても、「モテ期到来?やったじゃーん」で終わっちゃったし。何なんだ?モテ期って何よ、こんなに困るものならモテ期なんかいらないわよ。


*****


「苗字さんー帰ろう?」

「…真城くん」


 わたしを呼ぶ真城くんの声に、何で胸が跳ねたりしてるんだろう。好きな訳じゃない筈なのに。


「名前ー?あ、」

「高木くん…」

「なんでサイコーいんの?」

「苗字さんと帰るとこだけど。シュージンこそ何しに?」

「…サイコーと同じだよ」

「なっ…」

「三人で帰るのは…?」


 喧嘩はよろしくないからね。良かれと思って言った言葉に、2人は目を見張った。あれ、あなた達仲良かったよね?あれ?


「名前がそう言うなら…帰るか」


 2人と帰り道同じ方向だったとは知らなかったな、なんて思っても、私たちの間に流れる空気は最悪で。


「はぁ」

「名前、退屈?」

「そ、そうじゃないけど…」

「そりゃこんな空気じゃ、溜め息だって尽きたくなるだろ」

「そ、そうか…」

「あの、さ。質問なんだけど」

「なに?」


 ずっと考えてた疑問をぶつけてみた。


「わたしのどこを好きになったの?」


 あんまりよく知らない2人なんだもの、そういうこと、言ってくれなきゃわかんない。
 でもやっぱり、恥ずかしくて聞きたくないような、そんな気もするのだ。


「苗字さんはさ、毎日日直がし忘れた仕事をしたり、花の水替えしたり、優しいだろ。そこかな」

「なんだろう。名前見てると自分まで優しい気持ちになれるんだ」

「…そう」


 高木くんの発言は、答えになっていないような気がするけれど、気にしない。それも高木くんらしいような気がするから。


「苗字さん」

「なに?」

「ゆっくり決めて良いからね。どっちにするか。はたまたどっちも断るってのもアリだし。ね?」

「…うん」


 このもやもやとした感情と、もう少し付き合わなきゃいけないらしい。わたしは…どっちが好きなの?




カウントダウン


 あとがき

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