「はーあ!やったあ!終わった!終わったよ2号!」

「うん、お疲れ。今まで頑張ったもんね」

「うん、わたし頑張った!超頑張った!もっと褒めて!」


 大学受験。まぁ人生で大きなイベントの1つに入るんじゃなかろうか。成績の悪いわたしが、頭の良い2号と同じ大学を受けることになってから頑張った訳ですよわたしは。まあ2号がいたからなんだけど。


「そういえばわたしって2号に世話んなりっぱなしだね」

「なにを今更」

「幼稚園の時はどこに行くにも3人だったし」

「名前がよく家に来てたからだよね」


 今思えばよくあの家まで毎日行ってたな…。あの門の前の坂キツいし、自宅からはバスじゃないと大変だったし…歩いてたような気もするけども。


「小学生の時は転んで血でた時とかやけにテキパキ処置してくれた覚えがあるよ」

「名前がよく転んでたからだよ」


 確かに低学年の時はよく転んでいたかもしれない…。2号は一人っ子のわたしにとって良いお兄ちゃん的な存在だったな。1号はあんまり構ってくれなかったし。一緒にいたことにはいたけど。


「2号をちゃんと意識し始めたのは中2くらいの時だったかな」

「…ぶっちゃけるね」

「中学生とか恋バナするじゃん?それでわたしは好きな人いるんだろうかって考えてみた結果だよ。あ、小学高学年の時も女子の会話でそういうのはあったけどまだお兄ちゃんって感じだったから」

「俺はずっと好きだったけどね」

「え?え!?いつから!?」

「…小学生、くらいの時から」


 うわー2号顔真っ赤だ。レアだ写メりたい!…あ、携帯家に置いてきたんだったチクショウ。こんな時に限って役立たずめ!
 待てよ?小学生くらいの時って…。仮に小1からだとするとわたしは7年間そうとも知らず普通に接していたのか!馬鹿じゃん!


「わたしそんなに思われてたんだあ…」

「な、なんだよ」

「べっつにー?」


 なんかいつも余裕有り気だけど、今はちょっと焦ってる2号さん。今日は良い日だ、レア率高め!
 受験も終わったし、手応えあったし。本当2号のおかげだよ、後は合格発表待つのみ!


「…2号?」

「うん?」

「もしかして解けなかった問題が一問だけあったとか?」


 2号に限ってそれはない。ない筈なんだけど作り笑いをしているのはわかるよ2号。頭が悪いったって2号はちゃんとわかるんだから。


「そんな顔してる?」

「無理してるでしょう」

「なんでこういうのは名前にバレるんだろうな」

「馬鹿じゃないの、彼女だからだよ」


 また2号は苦しそうに笑った。どうしたの、さっきまでちゃんと笑ってたじゃない。そんな顔は、見たくないのに。


「俺さ、自衛隊行くんだよね」

「えっ…大学は?」

「そっちの、行く」

「冗談やめてよ」

「冗談だったらこんな顔しないよ」

「……」

「……」


 わたしが沈黙を作ると、2号もそれに続いて黙った。酷いよ、それを言ったらわたしがショックで立ち直れなくなるのが目に見えるから、今言ったんでしょう?受験もままならないっていうのを避ける為に、今言ったんでしょう。卑怯だよ、2号の卑怯者。2号のいない大学なんて、つまらない。わたしは絶対そう言うから。


「2号の馬鹿!相談してくれたっていいじゃん!何で1人で決めちゃうの!」

「それは名前が…」

「っ、わかってる!」


 わたしが自衛隊入るとか言いかねないから。わかるよ、そんなこと。だからって、だからって!


「ごめんもう止めないよ。2号は2号の好きなことやればいいさ」「ありがとう」

「でも休みに帰ってきてね!じゃないとわたし死んじゃうから!2号欠乏症で!」

「うん、帰ってくるよ。俺も名前いないと寂しいしさ」


 わたしが許可を出すっていうのもなんかおかしい話だけど、でもいいの。2号がまだ少し悲しい顔をしていたけど、いいの。


「最後に1つお願いなんだけどさ、もう2号って呼ぶの終わりにしてよ。最後なんだし、せめてランクアップで1号に…」

「行ってらっしゃい、理一」


 そんでわたしは渾身の力を込めてぎゅうっと抱きしめた。






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