「いつまで雑用やってればいいんですか!」
「一生やってろ」
「編集長がいじめるぅー」
「……またやってるよ」
こんなんじゃわたしが我が儘言ってるジコチューな子に見えるだろうから一応言っておくけど、わたしはもう一年、此処、週間少年ジャンプで雑用させられている。わたしは雑用やりたいんじゃない。何でこんなむさ苦しい男達の世話しなきゃいけないのよ。編集になりたいの!この手で漫画を世に送り出す仕事がしたいの!
「不服そうな顔をしているから一応言っておくが、『雑用でもいいから週間少年ジャンプで働かせてください!』と土下座までして乗り込んできたのは誰だ?」
「うっ……」
「週間少年ジャンプ、つまり少年の為の漫画だ。編集に女はいらない。これはずっと守らなきゃいけない規律なんだ。お前が雑用として此処にいることでさえ特例だと言うのに」
「わたしはお前じゃない…!」
「編集になりたいなら他へ行け。俺はお前を編集にする気はない」
「もしかしてわたしの名前も忘れちゃったんですか?これだからオジサンは……」
「おい、苗字!その辺で止めとけ!」
「止めませんよ港浦さん。そもそもわたしはこんなとこ来たくなんかなかったんだ。こっちから出ていきますよ!」
「おう、そうしろ」
「本当に出て行っちゃいましたけど、編集長、いいんですか?」
「構わん。そのうち戻ってくる」
「はあ……」
大口叩いて出てきてしまったけれど、結局わたしが行く場所なんて他にないんだ。それを分かってて編集長、あんなこと言うんだから。むかつく。わたしは週間少年ジャンプじゃなきゃ嫌なんだ。他の雑誌のところなんて行くもんか。……佐々木編集長がいるところが、いいんだもん。
*****
鳴り響く着信音。編集長のデスクの備え付けの電話が鳴っている。受付からだ。
「はい、佐々木だが」
『苗字さんが下でお待ちですが、いかが致しますか?』
「早く上がって来いと言ってくれ」
『それが、佐々木編集長が下へ降りてこないと動かないと言っておりますが』
「……分かった」
全く困った小娘だ。こんなジジイに子守りなんかさせて、心までかき乱そうとしてくる。しかし、そんな奴に甘い自分がいるのも事実だ。多分、瓶子は呆れてるんじゃないだろうか。
「行くぞ」
「編集長が謝ってくれたら行きます」
「……」
「う、嘘です!置いてかないでください!」
「手間をかけさせるな」
「……ごめんなさい」
こんな風にしおれて心からの反省の色が見えるときはかわいいかな、と思う自分がもう分からない。しかし、こいつに限って本当に他の雑誌へ行ってしまうとは思ってもいないが、もしも、万が一を考えなかった訳ではない。帰ってきてくれて良かった、そう思い、手を奴の頭にのせた。
「……へ?」
「これに懲りたらどっか行こうだなんて考えるなよ」
「はーい」
気の抜けたこの顔は他の奴に見せてくれるな、そう思うがそんなことを口にしたら調子に乗るだろうから言わないでおく。
最強ジャンプへ人事移動の話が来ているが、俺が向こうへ行ったらこいつは来てくれるだろうか。
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遅くなり申し訳ございません!最初の方は甘くありませんが、編集部でよく見られる喧嘩ということで本気ではありませんので最終的には甘いかなー?という感じになりましたのでご勘弁。週間少年ジャンプでは本当に女性編集は作らないそうなのでそれをネタにしてみました。それでは!リクエストありがとうございました!
130506 碧子