※学パロ












「苗字さん」

「はっ、はい!」

「何で敬語なの。さっき先生が呼んでたよ」

「あ、ありがとう!」


 思わず敬語を使ったわたしに少し呆れながら言った。折角、折角七峰くんが話しかけてくれたのに、わたしったら上擦った声しか出せなくて、ろくに会話もできなかった。わたしの馬鹿!……でもやっぱり少しでも話せたことが嬉しくて、頬の熱を冷ますように廊下を早足で歩いた。そういえば「先生」としか言われてないから多分担任だよね?


「失礼します。先生がわたしを探していたと聞いたのですが……」

「え? 探してないよ。気のせいじゃないか?」

「そ、そうですか。失礼しました」


 あれ、おかしいな。じゃあわたし何で職員室に来たんだ? 七峰くんに先生が呼んでるって、言われて。
 ──七峰くんに聞いてみよう。けど、わたしなんかが七峰くんに話しかけられるんだろうか。さっきだって、あんな短い会話で浮かれてるような奴が、自分から話しかけるなんて無理……でも、この矛盾を解決しない訳にはいかないし、どうしよう……。


「どうだった?」

「な、七峰くん!」


 教室に入ったわたしを待ち受けていたのは七峰くん自身で、席に着いたのを見計らって来たらしかった。そんなにこにこ顔で見られると…恥ずかしいっていうか、こっちが照れちゃうっていうか……。


「先生、どうだった?」

「あ、あのね! 先生、わたしを呼んでないって……」

「うん、それで?」

「それでって……?」


 どうして眉ひとつ動かさないんだろう? 先生が呼んでたって言ったのは七峰くんなのに。まるで、こうなることを分かってたみたいな表情に口振り。


「だって俺、嘘ついたし」

「な、何で!?」

「名前の色んな顔が見たいからだよ」

「!!」


 突然耳元で囁かれて、背筋がぴんと張った。体中を駆け巡るぞくぞくが止まらない。
 今、七峰くん、名前って……。


「苗字さん見てて飽きない。今だって顔真っ赤だし。本当に百面相だね」

「そんなこと、ない!」

「ほら、怒った顔もかわいい」


 かわいい、だなんて七峰くんの口からわたしに向かって放たれるなんて思ったこともなくて。体温は更に急上昇。ほらまた七峰くんはくつくつ笑っている。


「俺さ、名前のこと好きなんだよね。付き合ってくれるでしょ?」

「え……?」


 七峰くんがわたしを、好き……? いや、まさか。そんな都合の良い話ある訳ないじゃん。だって、今まで数回しか話したことないし、ただのクラスメートな訳だし、そんなこと、あるわけ……。


「何回も言わせる気? 聞こえてるでしょ? それに名前も俺のこと好きだし何の問題もないよね?」

「っ!」


 何でバレてるのー! わたしが七峰くんを好きなんて、親友の裕子にしか話したことないのに! それにさっきから七峰くんさらっと下の名前で呼んでくるし! 何なの!恥ずか死させるつもりなの!


「答えは?くれないの?」

「お、お願いします」

「よく出来ました。じゃあ今日から名前は俺のモノだからね」


 そう言って優しく頭を撫でた。教室の片隅にいる2人のことなんて、クラスメート達は誰も気にしない。




□□□□
フリリク参加、それから祝いのお言葉ありがとうございます! 七峰くん学パロとても楽しかったです(*^▽^*) 結構ヒロインを振り回したつもりですが、いかがでしょうか? 先生が呼んでるとか嘘を言ったのも、自分を気にしてほしいから、怒った顔が見たいからとかだったらかわいいですね(笑) 一応甘のつもりです! それでは、これからも愛想笑い共々宜しくお願いします。

130328 碧子

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