※「光、闇」ヒロインです。
「忘れ物ないー?」
「無いよ」
「よしじゃあ行こう!」
暗く澄んだ空気の中、歩いて向かう先は温泉。ラブマシーンの一件で陣内家の近くにできたアレだ。近く、と言っても陣内家の敷地が大きい所為で、歩くにはちょっと大変だけど、佳主馬と2人の時間が増えるからって(このことは言ってないけど)佳主馬に提案してみた。(まあ、バスには乗るんだけどさ)あっさりその提案は通って、2人で出かけることになったのだ。侘助さんや万里子おばさんからのお咎めもナシで、やっぱり静かで平和なところが一番だ。
「佳主馬ー」
「なに」
「何分後集合にする?」
「好きなだけ入ってくればいいじゃん」
「そんなこと言ったら佳主馬湯冷めしちゃうって」
こうやってわたしの提案に乗ってきた辺り、佳主馬もそれなりに温泉が好きなんだろうけど普段お風呂出るのがかなり早い佳主馬がそんなに長く入っていられるとは思えない。
それでも何も言わない佳主馬に対して、出来るだけ早く出てくるね、と返した。
*****
「お嬢ちゃん、おひとり?」
「あぁ、えっと、彼氏と来たんです」
「そうかい。若いのはいいねえ」
温泉に1人で浸かっていたら、おばあさんが話しかけてきた。勿論知らないおばあさん。でも、何だかんだでわたしの方の手の内はバレていることが多い。陣内家の人間はこの辺りじゃ(人によってはこの辺りどころじゃないけど)有名人だ。
その後、おばあさんとたわいもない話をして盛り上がった。定番だけど、温泉浴びた後の牛乳は美味しいだとか、何処の温泉まんじゅうが美味しいだとか。とりあえず食べ物の話ばかりしていた。共通点がそのくらいしかなかったみたい。
「あっ!」
「どうしたの?」
「彼、待たせてあるんです、すみません、もう上がりますね」
「そりゃあ早く行ってやらんと」
「はい」
佳主馬を待たせているという焦りから私史上最高のタイムを叩き出したんじゃないかと思う。勿論、着替える速さの話だ。服を持ってきた鞄に詰め込み、急いで女湯から上がった。温泉から上がった、広場のテレビから少し離れるところに佳主馬は座っていた。
「ごめん、待たせて…」
「正直、のぼせた」
「うわああ本当にごめん!」
佳主馬がお風呂からのぼせて上がってくることなんかわたしの記憶がある限り一度だってなくて、そのたった一度をわたしとの温泉で出してしまったなんて…早く出てくるって、約束したのに。こんな簡単な約束も守れないなんて。
「別に気にしてないから。それで、これ」
「コーヒー牛乳?」
「飲めば?」
すっと横に移動してわたしの座るスペースを確保してくれたりするのだからもうこれは嬉しい以外の何者でもない。だってわたしの為にコーヒー牛乳買ってくれて文句何一つ言わずに(っていうのは言い過ぎか)わたしを待っててくれるんだよ?これが嬉しくなくて何だって言うの。
「ありがとっ!」
「うわっ、ちょ、抱きつくな…!」
人目の前で抱きついたりするのを佳主馬は嫌がるけど(陣内の人間は当てはまらない)いいじゃん、幸せなんだもの。たまには見せつけてみたってさ。
「名前、帰るよ」
「はーい」
佳主馬は早く2人っきりになりたいんだって。繋がれた左手がそう言ってるよ。わたしに隠し事はナシなんだからね。
昼夜逆転
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勝手に「光、闇」ヒロインにしちゃってごめんなさい!温泉行くなら同じ家から行って戻ってくる方が楽かなって思ってしまって!そしたら特に変な理由もなく一緒にいる奴…「光、闇」ヒロイン!みたいになっちゃって…_(:3 」∠)_お粗末ですみません。温泉ネタこんなんで良かったでしょうか。かなり早いですが、お誕生日おめでとうございます!(*´▽`*)笑
碧子