「あ」
「「あ」」
「名前さんじゃないですか」
「黒子…、と黄瀬」
「何で俺だけ後付けなんスか〜」
で、今に至る。と言っても、近くのバーガーショップに入って3人で話しているだけなのだが。黒子はいつも通りシェーク、黄瀬は身体をいたわってか何も頼んでいない。わたしはと言えばポテトのM。ちょっと小腹空いてたし。
「あー受験、めんどくさいな〜」
「あぁ、名前さん……」
「あ、もしかして今日誕生日じゃないッスか!?」
「よくわかったね!」
と思ったら黄瀬はカチカチと携帯をいじっている。もしかして女子の誕生日とかカレンダーに入ってるんじゃ…
「俺の携帯ナメないでくださいッス!」
「やっぱりか…」
「名前さん、いくつでしたっけ?」
「今18。だから受験なのよ」
「僕もです」
「あれ、そうなの?推薦は?」
「来てません」
「ああー、そっか」
「く、黒子っちは幻のシックスメンだからッス!」
「余計なこと言わないでください黄瀬くん」
「ええ!?」
黒子が推薦来てないのは、何となくわかった。何処行くのか、なんて問いもお互い口にしない。愚問だからだ。そんなことよりも久しぶりに会えたこの状況に、浸っていたい。今だけだから。
「黄瀬モデル業はどうよ?」
「なんかその言い方イヤ!んー普通ッスよー」
「普通か。ならいいね」
「何でスか?」
「特に理由はないけど」
オーバーリアクションの黄瀬を横目に、ポテトを口に運ぶ。黄瀬の隣にはシェークのストローをくわえて離さない黒子。やっぱりこの雰囲気は忘れられないや。
「名前さん、変わらないッスね」
「…そう?」
「見た目とかは少しは変わってるけど、やっぱり名前さんは名前さんッス」
「…ありがとう、なんか嬉しいな…」
「僕もそう思います」
*****
「じゃあ今日はありがとうー!大したこと話してないけど」
「あ、誕生日プレゼントとかないんでほっぺチューとかどうッスか?モデルにされるのなんて他にないでしょ?」
「魅力的だけど周りのおんなのこ達の目線が痛そうだから止めとく」
「じゃあ飴あげるッス!」
「わーいやったー!」
何で飴なんか持ってるんだなんていうのはさておいて(紫原じゃあるまいし)有り難く飴を受け取る。ピンク色の個包装、苺の形した飴。黄瀬の女子力…
「じゃあ黄瀬にはこれあげる。はい」
「!?蝉の脱け殻!…な、んで…」
「さっき拾った」
「いらないッスよー!」
なんかちょっと涙目になってる黄瀬がかわいくて、笑ってしまった。そういえば黒子がさっきから全然喋らない。ミスディレ?
「名前さん」
「ん?お、おう」
「頑張ってくださいね」
「うん、黒子もね!勉強も怠るんじゃないよ!」
「勿論です」
「黄瀬もね!」
「わかってるッスよー」
いきなり両手を握ってくるものだからびっくりしたけれど、これは黒子なりの表現なんだろう。何を表してるのかは、よくわからないけど。
「じゃあ、バイバイ!」
「名前っち、さようならッスー!」
「体壊さないでくださいねー!」
「その言葉、そっくりそのまま返すー!」
今まで冗談ばかり言ってた癖に、またね、なんて冗談でも言えなかった。今度いつ会えるかなんてわからないし。それでもまた今度会えたら、きっと同じように時間を過ごせるだろう、根拠の無い自信が、わたしを満たしていた。
帰り際に名前に「っち」付けるなんて、卑怯だと思うよ、黄瀬。
さよなら、また今度ね
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黄瀬にばっかりフラグ立てちゃってすいませんなんだかいつにも増してひどい内容ですいません。黄瀬って虫嫌いみたいなのを見かけたことがあるんで出してみた。虫嫌いといえば廉造を思い出す私← 返却可なのでお気軽に〜(^ω^)
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