夕飯の準備がし終わって、テレビを見ながら洗濯物にアイロンをかけていた。今日のメニューは魚の煮付けです。今まで一緒に過ごしてきた中で、彼は和食が好きらしいことがわかった。まぁでも、そういう顔してるよね。裏切らないイメージ。

思いふけっていると、玄関のドアを開ける音がした。アイロンの電源を切って立て、玄関へ小走りで向かう。

「おかえりなさい」

「ただいま」

私が理一さんと暮らすようになってから3ヶ月程過ぎた。今まで住んでいたところから、私が理一の家に移ったのだけれど、マンションは広くて私がくるまで一人で住んでいたなんて信じられないくらい広かった。

「今日は早かったんですね」

「ああ、ちょっとな」

いつもは暗くなってから帰宅するのに今日は本当に早かった。だってまだ空が明るい、夕方なんだもの。

「ご飯にしますか?お風呂も沸いていますけれど」

「名前に来てほしいところがあるんだ。飯の前に外出、いいか?」

「全然大丈夫です」

パチ、部屋の電気とさっき見ていたテレビを消した。季節は秋で、夜外にでるのは肌寒いので、少しだけ着込んで外に出た。
出かける時は大抵理一さんのバイク。理一さんは車も持ってるんだけど、あまり乗らないみたい。高い車なのに、車庫で埃かぶって…なんてことはないけど。休日によく手入れしてるもの。車運転しないの?なんてことは聞かない。所有欲なのかなって勝手に解釈させてもらってる。ほら、男の人ってそういうの好きでしょ?

一回り小さい白いヘルメットを私にかぶせ、顎の下で固定する。この作業は毎回理一さんがやってくれている。別にわたしが1人で出来ないだとかそんなことじゃないんだけど、一種の習慣になっている。理一さんの手が私に触れているだとか、理一さんの顔が近くにあるだとか、そんなことにさえもドキドキして、何処を見ればいいのかわからなくなる。目のやり場がないとはこのことだ。

無言のままバイクは発車し、オレンジ色に照らされた街を通る。本当に何処に行くんだろ。必要以上にきゅっと理一さんにしがみついた。
目的地につくまでの間、私は理一さんの体温を感じていた。前から思っていたんだけど、理一さんって体温低めみたい。あんまりあったかさを感じなかったけど、私の心は十分あったかかった。


*****


「はい着いた」

「海?」

「そう」

早くもっと近くに行きたくて、自分でヘルメットを外しコンクリートの階段を駆け下りる。靴で砂浜の上を歩いたのはいつぶりだろう。いや、前回海に来たのはいつだったっけ。そんなことばかり考えて、歩いていた筈の足がいつの間にか走っていた。
流石に靴を濡らすのは嫌だったから、寄せては返す波の端っこに屈んで水を指に絡ませた。水はとても冷たくて、わたしの体温を急激に下げるようだったけど、しばらく触っていた。掬った水がするんと指の間からこぼれ落ちて、理一さんもわたしの前からいきなり消えてしまう気がしてやけに寂しくなった。

「綺麗…」

「だろ」

水面が夕日によって紅く照らされていて本当に綺麗だった。視界に入る全てが紅く神秘的だった。そうよ、自然はこんなにも素敵なの。いつかはこの紅も、見れなくなってしまうんだけれど。その時はわたしもいなければ、わたしの子孫もいないわ。

「これを見た時から、ずっと一緒にいたいって思う人に見せたいと思っていたんだ」

「え……?」

「結婚、してくれないか。これからも俺を支えてほしい」

唐突に言われ、溢れた情報を整理してくれない脳。結婚…けっ、こ ん...
どこから出したのかわからないけどわたしの前には指輪があって。理一さんはずっと、わたしの様子を伺っている。

「返事を、聞かせてくれないか?」

「…宜しくお願いします」

コクリと頷いてた。こんな素敵な場所で、最高のプロポーズうけて。わたしは幸せ者だ。きっと今のわたしの頬はこの海みたいに赤くなっているだろうけど、理一さんにバレたくない。恥ずかしいもの。

「指、かして」

「はい」

するっと左の薬指にはいる指輪。サイズもぴったりで、流石理一さんって感じ。

「理一さん、」

「ん?」

「す、好きです」

「俺は愛してるよ」

くしゃっと髪に触って、どちらとも無く唇をあわせた。



「いつ籍入れようか、」
「え!?ええと、うーん…」
「その前に挨拶に行かなきゃな」
「頑張ってお父さんを説得させます!」
「認めてくれなかったら駆け落ちな」
「!」




□□□□
こんな甘いの初めて書いた気が…ww
理一さんにはいつでも一枚上をいっててほしいものです。
それでは、絢さまリクエストして下さりありがとうございました。
お持ち帰りは絢さまのみおkでございます。

101017

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