僕は今、母さんと妹の3人で買い物にきている。勿論長野じゃなくて名古屋なんだけど。
 妹はおばあちゃんが亡くなった年に生まれて今年でもう2歳。僕も少しだけ大人になって中3になった。
 今日は日曜日だからかやけに人が多くて嫌になる。酔いそうだ…うええ

ドンッ

 突然後ろから押されて、というかぶつかられて、体が前かがみになる。その瞬間見たのはポロッと落ちていく淡いピンクのハンカチ。もろ女の子なハンカチが地面へ向かって落ちていく。周りに可愛い女の子でもいるんじゃないかと思って思わず拾う。近くに該当者がいなかったら交番にでも届けよう。ハンカチくらいで取りに来る人がいるとは考えにくいが。

 ぶつかってきた人は誰だろうと後ろを振り返る。するとそこにいたのはリュック背負った可愛い女性だった。高校生…いや、大学生?まぁとにかくそれくらいの年だろう。僕より絶対に年上ってことはわかる。ちょっと大人な雰囲気があるし。

 彼女はぶつかってしまったことに後ろめたさがあるようで何度も「ごめんなさい」を連呼している。さすがにそこまで言われるとムカついてくるんだけど。それに僕は全然怒ってなんかない。だって君がぶつかってくれなかったら僕は君を知らなかったし、この広い人ごみの中で出逢えたこと自体が奇跡だと思うんだ。
 ねぇ、君の中の僕の存在は街で会ったただの少年?

 ───僕は、君に一目惚れとやらをしてしまったらしい。「全然大丈夫ですからお気になさらず」と親が使っていた敬語を真似て彼女に言うと、最後にもう一度「ごめんなさい」を言って走って消えた。
 この場にいるのがいたたまれなくなって逃げ出したのか、これから用事があるから急いでいたのか君の意図はわからないけど、僕はもう少し君と一緒にいたかったよ。

 あ、ハンカチ…母さんに綺麗に洗ってもらって、もし次会ったら運命だと思って。とりあえず返そう。


*****



 今日はこの前の女の人と出会ってから丁度一週間、次の日曜日。今度は1人だけで街に来ている。ぶつかった所を行ったり来たりしている。今思ったけど周りから見たら不審者と思われそうだ。通報されたら元も子もないので近くのカフェへ入った。

 カウンターでコーヒーを頼んで受け取り、窓際の席を選んで座った。そしてまた永遠とその場所を見つめる。僕は暇人だ。でも恋に精一杯努力している。こういうのを青春っていうのかな。

 コーヒーがそろそろ底をつきそうだ。もう来てから30分たっている。確かこの店はコーヒーおかわりできたような。ノーパソでも持ってくれば良かった…でもそんなことしてたら彼女を見つけることができない、と考えを改める。
まず、また今日もここにいるとは限らないのだから。


「あ、この間の…」


 後ろから声がして振り向くとそこにいたのはこの間の彼女で。
本気で運命だと思った。
今日こそは引き止めておかないと、
 パッとハンカチの存在を思い出して取り出す。


「これ、あなたの?」

「あ、無くしたと思ってた奴!落としちゃったのか、ありがとう」


 笑顔が眩しい。眩しすぎる。すると彼女は「ここ座っていい?」なんて言ってきて、僕はちょっとキョドった声で返事をしたら、彼女は楽しそうにくすくす笑った。 「彼女待ちだったらどうしようかと思った」なんて言うんだ。それはつまりどういうことなの?


「中学生?」

「はい、中3で──」

「あ、敬語は無しね。距離を感じちゃって嫌なの。」

「わかった。」


 話しててわかったのは名前っていう名前と大学生ってこと。この間は大学に向かっていて急いでいたから走ってたんだって。学校についてから日曜日ってことに気づいたらしい。僕が「馬鹿じゃないの?」って言ったら「だよね…」と返してきた。自覚はあるんだ。まあでも可愛いから許されると思う。


「じゃあそろそろ…」


 そう言って名前は立ち上がり、レジの方へ歩いていった。僕が慌てて追いかけると僕のコーヒー代も支払ってくれていた。僕だってOMCで稼いでるからお金あるのに。もしかしてそれは子供扱い…?


「まだ時間ある?」

「あるけど?」

「じゃあ欲しいものとか行きたい場所とかある?ぶつかっちゃったお詫びとハンカチのお礼したいし」


 名前が欲しいなんて言葉は飲み込んで、「名前の家に行きたい」って言った。
 そしたら名前はキョトンとして「そんなことでいいの?」って。あーもう子供扱い。男を家に上げるんだよ?そんなことな訳ないのに。僕がまだ中学生だから?師匠は中学生でも大人って言ってたし、二年前よりは背だって伸びた。のに…

 感情を抑えて「うん、名前の家に行きたいんだ」と言う僕は大人なのかな、


*****

 名前のマンションにつくまで話は全然絶えなかった。エレベーターに乗り込むと6の数字を押す。ここのマンションは14階まであるらしい。表札には苗字と書かれてあってここが名前の部屋なのかと思うとちょっとどきどきする。


「佳主馬…というか中学生は普段何してるの?」

「部活とか?僕はやってないけど」

「なぁんだ佳主馬暇人じゃん!あ、そうだ。暇ならうち来ていいよ。いないこともあるかもしれないけど」


 そう言って目の前に掲げる合い鍵。どういう風の吹き回し?これは脈アリなの?合い鍵って昔の彼氏が置いてった奴?そういえば僕、名前が今彼氏いるのか聞いてないや…
 頭の中にある疑問をパッパとはらい、有り難く受け取る。これで出入りできる正当な理由ができたんだからまあ進歩だ。

 窓を見ると暗くなりはじめていたから名前の部屋を後にした。「送ろうか?」なんて言われたけどきちんと断った。そんなことしたらまたここに帰ってくる名前の方が危ないことは百も承知だ。名前はそういうところに気がいかないらしい。もっと自分を大事にしないといけないよ。

 明日から学校帰りに必ず寄ろうと心に決めた。


*****


「ひとつ、いい?」

「なに?」

「名前って、僕のことを子供扱いするよね。何で?僕が中学生だから?名前よりも年下だから?ねぇ、何で?」


 今は名前の部屋にいる。初めて鍵を渡された時から二週間くらいたって、名前がいないときも好きなように使わせてもらってる。家がもう一つできたような、そんな感じ。
 僕がずっといいたかったことを聞いてみた。もう長く接してるんだから聞いてもいいよね。言いたいこと言ってもいいよね。僕より背が高い君に詰め寄って言うけれど。頬が紅く色づいたりなんていうことはない。眉を下げて困ったような顔をするだけ。そう、それだけ。僕は眼中にないんだろうか。ないんだろうな。


「やっぱりいい。何でもない。ごめん、変なこと聞いて。」「佳主馬ってさ、」


 答えなくていいといっているのに話してくる。なにが言いたいの?思ったけど僕って結構自己中心的なかもしれない。エゴイストだ。


「私のこと好きでしょう」


 息を呑んだ。言葉を失った。え、なに。お見通し?
 僕はすぐに否定することもできたけど、それはしなかった。だってそんなこと言ったら取り返しのつかないことになるかもしれない。なにより、図星だし。


「もし、嫌いだったら話して1日目の人の家に行きたいだなんて言わないだろうし、合い鍵も貰わない。毎日なんてこない。……これ以上の証拠が必要?」


 誤算。名前は意外と物事をズバッと言うこともあるらしい。ただの可愛い人だけではないようだ。今頃気づくなんて、僕も馬鹿だ。


「じゃあ名前は、僕のことどう思ってるの」

「好きだよ、異性として。」


 即答された。僕が名前を好きだってこと、それは仮定じゃなくて、結論だったらしい。じゃなかったらそんな言葉、口から出てくる訳がない。


「佳主馬はどうなの?」

「知ってるじゃん」「ちゃんと佳主馬の口から聞きたいの」

「好きだよ、名前が思ってるよりも」

「あは、言うねえ」


 名前は少し屈んで僕も抱きしめる。本当は僕が包んであげたいのにそれができなくて悔しい。その悔しさからきたのかわかんないけど、抱きしめ返しながら腰を触った。


「最近の中学生は手が早いのね。でもまだあげないよ」

「なんで?」

「私より大きくなったら考えないこともないかな」


 ふふ、と微笑んだ。少しはぐらかされた気がしたけど、いいや。とりあえず身長を伸ばさなきゃいけないのは明白になったから。
 名前の唇に僕のを重ね合わせてみた。そしたら「やだ、なんか恥ずかしい」だって。早く名前から余裕を取り除きたい。僕の方が上の立場になりたい。僕だけのものにしてしまいたい。もし、名前の可愛い仕草に欲情しちゃった時は責任とってくれるのかな?なんてね。



水の中で
求める酸素

(もうあなた無しじゃ生きられない)



お題:xxさま
□□□□

なんだろう、コレ…
凄いよくわかんかいことになったぞ
美雅様、微裏は無理でした。
どこまでの範囲が微裏なのかよくわからないんですよね、私←
だからまさかこんな注文がくるとは思ってもいなくて…ああああ
リクエストして下さり、ありがとうございます!
お持ち帰りは美雅様のみおkです。勿論持ち帰らなくても結構ですので!\(^o^)/

100905
加筆修正110103

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -