「ふう、重かったああ。ただいまー!」
ドスンと荷物を玄関に置いて中の人に声をかける。すると万里子おばさんがすぐにやってきてパッパと荷物を運んでいってしまった。
「行こう?」と言って私の手首を掴んで促す佳主馬。
「ごめん佳主馬、私夕飯の手伝いしなきゃ」
「今日くらいいいじゃん別に」
「私がやりたいの。ほら、花嫁修行になるじゃん?だから」
「そっか。じゃあ、僕行くから」
そう言って納戸の方へ歩いていった。私も台所へ歩き出す。それにしても今の佳主馬可愛かったなあ、あのちょっと照れて視線を逸らす感じ。でも頬が赤いからバレバレってことには気づかないんだよね。
台所に行くともう女性陣が忙しそうに料理を作っていた。どうも私達が買った食材は買い忘れに違いなさそうだ。他にも沢山食材が散らばってるし。聖美さんはわたしを見つけると「おつかいありがとう」と言った。聖美さんとは結構話す方。優しくてあったかい。それにもうわたしと佳主馬の仲はバレている。居間でみんながいるときに佳主馬が容赦なくわたしに口付けたのだ。驚く人もいれば前からわかっていたというようにやっとか、と漏らす人もいた。それに対して「僕とれんげが付き合って何が悪いの」と答え、2人してその場をあとにしたのだ。その時から親戚公認の仲になった。いきなりってのはやっぱり恥ずかしいじゃん、わたしが。まあ認めてもらうのは嬉しいからいいけど。
「聖美さん、私は何を手伝えば?」
「うーん…あ、そうだ。そこの食材でお味噌汁作ってくれる?」
「はい!」
*****
「佳主馬。ご飯、どうする?」
「此処で食べる」
「わかった」
皆さんご存知の通り、佳主馬は居間でご飯を食べたがりません。だからこうして納戸まで聞きにきたんです。納戸で食べると言われたからわたしの分と佳主馬の分をお盆に乗せて持っていく。納戸に戻ると、佳主馬がギリギリ2人で食べれるくらいの小さなテーブルをだしてくれていた。
「れんげは何作ったの?」
「お味噌汁」
「ふーん」
そう言ってまず最初にお味噌汁を啜る。言い方悪いけど、判決を言い渡される被告人の気分だ。口に合わないかな、とか考えて心臓が煩い。どうしてそんなに早く時を刻むの。あ、やべ、手汗かいてきた。というか佳主馬早く何か言え!
「うん、おいしい」
「本当!?」
「本当。れんげって料理できたんだ」
「お味噌汁くらいなら勿論!一応女の子ですからっ」
「じゃあさ、今度なんか作ってよ」
「え?なんかって?」
「何でも。カレーでもいいし、肉じゃがみたいな和食でもいいし、ハンバーグとかエビフライとかスパゲティ、何でもいいから。お菓子でもいいし」
「わかった」
佳主馬って何が好きなんだろうか。直接聞いておくのもいいけど、もしそれが作れないような゛大物”だったら困るから聖美さんに聞いてしまおうか。
その後は美味しくお夕ご飯をいただきました。今度誰かに料理教えてもらおうかな、夏希姉なら聞きやすいけどそもそも料理をできるのかな?(失礼なのはわかってる)いや、でも意外と健二さんの為に頑張ってそう。それともやっぱり大人がいいかな、聖美さんに教わるのは恥ずかしいし(だけどお袋の味というものを知りたいのでちょっぴり気になる)奈々さんなら親切に教えてくれそう。
まあ、また今度考えよう。