「侘助さん」
「ん?」
「遠距離恋愛したことある?」
「なに?お前達全然遠距離恋愛じゃねえじゃん。身内って近すぎるくらいに」
「ちゃんと答えてよ!」
「…あるよ。自然消滅したけどな」
自然、消滅…。わたし達もそんな風になっちゃうのかな、嫌だよそんなの絶対。佳主馬がわたし以外の女のところに行くなんて駄目。そんなの許さない。
「ま、お前達はそんなことないと思うから安心しろ」
「へ?」
「れんげの考えてることは分かり易すぎんの。ま、とりあえず心配なら話せばいいじゃねえか。OZでも何でも」
「うん…」
佳主馬とわたしって、確かに身内で近いけど、でも実際は一年に一度しか会えないんだからめちゃくちゃ遠い。これは遠距離でしょ。おまけに相手は有名人(OZの中でだけど)だし、わたしは佳主馬のこと全然わかってないし…というか知らないし…。
「その話は置いといてよ、高校どうすんだ?」
「高校、か」
「あぁ」
勿論忘れてた訳じゃない。只、そういう面倒なことは佳主馬がいる間は考えたくなかっただけだ。侘助さんもそれをわかって今言ってくれたのかもしれないし。でも、ごめん。
「今ちょっと、それ考えられない」
「別に俺はとやかく言うつもりはねえけど、東大行けよ」
「と、東大!?なんで」
「俺が行ったからお前も行けるだろ」
「血が違う!」
「夏希は誰かの為に行ったよなー」
「だって佳主馬は…!!」
佳主馬は?佳主馬は何処行くの?それすらもわたし、知らない。こんなんで彼女なんて言えるの?
「もうちょっと考えて結論出すから待ってて」
「ん」
こんなに家までの帰りが疎ましく感じたことが今までにあっただろうか。
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