「れんげー元気だったー?」
「そっちこそ元気だった?くたばってない?」
「宿題なんて爆発すればいいのに!」
「落ち着け」
久しぶりの学校、久しぶりの友達。佳主馬のいない、いつもの毎日に戻ってきた。学校はそれなりに遠いので、朝は侘助さんが送ってくれる。基本的に侘助さんは家にいるからだ。あ、ニートじゃないよ?
「れんげいつも夏休み遊んでくれないんだもーん」
「ごめんごめん」
「どーせカズマにべったりだったんでしょ」
「で、どうだったのよ」
「へ?」
「カズマとに決まってるでしょ」
いつもの仲良しグループで夏休みの土産話を繰り広げる。彼女たちが佳主馬をカズマと呼ぶのは、わたしが彼をそう呼んでいるからだ。その子が呼んでいる呼び方で知らない相手を呼ぶ。女子は割とそんなもんだ。
「いつもと同じだったよ?」
「あんなに夏休み楽しみだー何だー言っといてそれはなくない?」
「進展はあったの?」
「き、キスは、した、よ…」
「なんだもう進展してないじゃん!」
みんなはもう、わたしと彼の関係を知っている。親戚だけど血は繋がってなくてちっちゃい頃からずっと一緒にいること。だからみんなには相談できるんだ、こんな話。
「そういえば、れんげのアバターってなんでキング・カズマと同じ耳なんだっけ」
「それは、陣内家に来たばっかりで一人ぼっちだったわたしを安心させる為?というか、なんというか…」
「ふぅ〜ん」
「カズマはいつから好きだったの?れんげのこと」
「え?昔、じゃない?」
「だから、いつ?」
「…厳密なことはわかんない」
「そういうことちゃんと聞いとかなきゃ駄目だよ!」
「そ、そうなの?」
「「そうだよ!」」
「…おおう」
「キングの耳って安心させる為っていうか年の近い親戚できて、嬉しくなって手下が欲しかったんじゃないの?」
「な、にそれ。そんなわけないじゃん」
「ちょ、アンタ何言ってんの」
「れんげ、気にすることないからね」
わたしを励ましてくれる中、そのくらいの男の子なんてそんなもんよ、とわたしに気に障ることを言った子は言う。そうなのかな、手下にしたかっただけなのかな。わたしを自分に手懐ける為だったのかな。
「でも、わたしは佳主馬を信じるよ」
「そ、ならいいけど」
自分で言っておいてアレだけど、信じるって何を信じるんだろう?佳主馬から何も聞いてないのに。久しぶりに友達と会えたのに、随分とわたしの心は沈んでしまった。あの子が悪いんじゃない。わたしが佳主馬のこと何も知らないだけだ。
今だって、佳主馬が学校にいるくらいのことしかわかんない。
120707