終わらな、い…っ!宿題が!今日お祭り当日!どうしよう!佳主馬に殺されry
「何してんの、着替えなよ。時間ないよ?」
「…佳主馬ごめんっ!」
「なにが」
「宿題、終わりませんでした」
「知ってるよ。僕もまだ少し残ってるしいいよ」
「えっ」
「それに全部終わらせろなんて言ってないしね」
「騙したな!?」
「騙してない騙してない。まあでも宿題かなり終わったし結果オーライじゃない?」
「…そうかも」
「じゃあ浴衣に着替えてきて」
「はぁい」
白に紫色の花が散っている浴衣にピンクの帯。いつも使っていない箪笥からそれを取り出して下へ駆け下りて行く。1人では着られないからだ。
「直美さん!ちょうど良いところに!」
「え、何か嫌な予感するんだけど」
「着付けしてくれませんか?」
「あー…いいよ、こっちおいで」
今の一瞬の間は何だろう?まぁいいか。多分直美さんのめんどくさがりが原因かな。
「そういえばれんげも大きくなったわねぇ。昔はこんなに小さかったのに」
「いつの話をしてるんですか」
ちょっと笑いながら軽く流す。昔の話はあんまり好きじゃないから。直美さんはこういうところ、わかってくれない。
「こんなに大きくなっちゃって。いつの間にお姉さんになっちゃったんだ?あん?」
「ちょ、直美さん!苦し…」
「おっと、ごめんごめん」
ずっと、昔の話にはならなかったから少しほっとした。小さい頃の話をされるより、こうやっていじられる方がずっとマシ。養子縁組みのわたしにとってはね。
「はい、出来たよ。どう?大丈夫?」
「うん、良い感じ…ありがとうございます!」
「祭り楽しんできなね!」
「はい!」
着付けてくれた部屋を後にして早速佳主馬を探す。そういえば佳主馬、浴衣に着替えるとか言ってなかったけど、着替えてるかな?どうせお祭りに行くんなら、二人で浴衣で行きたい、普段見ない佳主馬を見たい…と思うのは変?
「かーずまー!」
「浴衣で走らないの!着崩れるでしょ」
「わ、佳主馬も浴衣じゃん!」
「理一さんに捕まっちゃって…絶対浴衣じゃないと駄目だって」
理一さんグッジョブ!だけど、一瞬佳主馬と以心伝心…!とか思っていた心はガラガラと崩れ落ちた。ま、そんなのいつものことだからいいんだけどね。
「じゃあ行こっか」
「うん」
手を繋いで玄関へ向かうと…
「仕度できたー?早く行くよー!」
海の時の如く理一さん、夏希姉、健二さん、その他ちびっ子とその保護者がわたし達を待っていた。夏希姉、今日も可愛いなぁ。長い髪をまとめてアップにしている。わたしは頭飾りの花1つだ。
「なんでいつも2人きりじゃないんだ」
「大家族(?)だから仕方ないよ…」
わたしも佳主馬と2人で行きたかったけどさ。
120430