「いつまでこんなこと続くんですか」
「いつまで?遠子ちゃんは終わりがあると思ってるの?ある訳ないでしょ、そんなもの」
「っ…」
また先輩の眼がギラリと光ったような気がして、わたしは息をのんだ。
菅原先輩は実は吸血鬼である。この学校でそれを知るのはわたしと本人くらいしかいないらしい。というか他の人には言ってないって、先輩自身が言ってた。やけに首回りばっかりキスするから何だろうと思ったら、ある時がぶり、と噛みつかれて、恐ろしい衝撃がわたしに走った。それはもう、意識が飛ぶかと思うくらいで、それと同時に恐ろしい快楽の波がわたしを襲った。ぶっちゃけてしまうと自分じゃ立っていられなかった(先輩が足で支えてくれたからかろうじて立っていられたけど)。という訳で、吸血鬼だから人間の血は大好物なんだとか。獲物として選ばれたのがこのわたし。
「はい、今日はどこまで1人で立っていられるかな?」
「っ、」
そう言ってまるでわたしに挑戦状突きつけるようにしてまた、がぶり、と首筋を噛む。血を吸われるのは嫌いじゃない。確かに一気に沢山吸われるのはふらふらするし、若干貧血にもなるけど、先程言った通り、ちょっと気持ちいいのだ。つまりわたし達は双方共にメリットがある関係を築いている、とでも言えば聞こえはいいが…
「いたっ」
「……」
「先輩、爪、いたい…」
「最近血の量減ったよね?圧迫しなきゃ出てこないんだけど」
「っぐ、」
首に爪を食い込ませているのはわざとだったらしい。と思ったら反対の手で肩にも爪を立ててきた。かなり痛い。吸血鬼なだけあって血を吸ってる時は爪若干伸びてるし(ちょっとだけ伸び縮みしてるみたいなんだよね)、確か先輩の爪は堅かったし…(前触った時に、ふと思っただけなんだけど)つまりそんな爪を食い込ませられたらかなり危険な訳で、かと言ってこの状況から逃れられる訳もなく…
「……」
「あれ、どうしたの?」
「……」
「…貧血か」
*****
「…あ、先輩」
「今日は7分だったね。まぁ前より伸びたか」
目が覚めるとわたしは真っ白なシーツの中にいて、多分此処は保健室なんだと思う。布団から出た右手は先輩の手と繋がっていた。なんだかそのことに嬉しくなってぎゅっと握ったら、手を置いていたことを忘れてたみたいに柄にもなくちょっと焦って(というか目が泳いでた)その後わたしから目を逸らした。あぁ、わたしだけじゃなかったんだって。わたしだけが先輩を好きな訳じゃなかったんだって。だって耳がこんなに赤い先輩なんて見たことない。
「先輩」
「うるさい」
「好きですよ」
「黙って」
120807