「菅原さんって優しいですよね」
「そう?ありがとう」
「でもなんか、優しすぎてなんというか…」
「陰薄いとか?」
「簡単に言うとそんな感じです」
「酷いなあ」
いや、決して菅原さんを貶してる訳じゃないよ?ただ、思ったことを全て口に出してしまう性格だから…。わたしが言いたいのは陰薄いってことじゃないんだよね。ていうか周りが濃すぎるだけだと思う。わたしだってあの中じゃ絶対埋もれるし。でも、菅原さんは優しいから。優しいんだけど、何か物足りないような気がするんだよね。でも、ほら、優しいから。
「告白されたことってあります?」
「失礼だな、田中よりあるよ」
「えっ、田中先輩告白されたことあるんですか!?」
「まーぼちぼち」
「知らなかった…」
あの凶暴的な性格が、逆に受けているのかもしれない、一部の女子に。でもあんなのなぁ…わたしは嫌だけどなぁ。
「菅原さん顔綺麗ですもんね。そりゃ告白されますよね」
「でもこんなもんじゃないよ」
何がですか?そう答えようとした時にはもう、背中は体育館の壁に到達していた。何これ、どういう展開ですか。あの、菅原さん?
心なしか後ろに黒いオーラを背負っている気がする。ちょっと怖いんですが。菅原さんってこんな人だっけ?
「俺が優しいだけなんて誰が言ったの?」
菅原さんの眼が、わたしを捕らえて離さなかった。
120617