「男バレ主将さんって何組？」
「大地さんか？ 大地さんならー、えっと…縁下！」
「なに？」
「大地さんって何組だっけ？」
「四組だったと思うよ」
「ありがと縁下！」
「え……何で桐山さんが？」
「ヒ・ミ・ツ！ でさあ田中」
「なんだよ」
「ついてきてほしーなー」
「何で俺がそんなこと、」
「暇でしょ？」
「あっ俺ノヤっさんのとこ行かなきゃいけねーんだった！」
「嘘はいいから嘘は」
「……」
結局田中の首根っこ掴むようにして三年生の教室へ向かった。どうせ暇なんだからいいじゃない別についてきてくれたってさ！ それなのに田中はまだブツクサ言っている。
「てかよぉ、大地さんに何の用だ？」
「今日見学させてもらおうと思って」
「女子は女バレに行け。大地さんは男バレの主将だって言ってるだろ？」
「違うよ、男バレを見学したいの」
「えっ、お前まさか、マネージャーに！？」
「あ、考えてなかった、その手があったか」
「桐山と毎日顔合わせるとかマジ勘弁……」
「同じクラスなんだからもう毎日顔合わせてるじゃん」
「部活まで一緒だと更に時間増えるだろ、ありえねえ……」
「ついた。田中呼んで？」
げんなりしながらも、「大地さんいます？」と近くの三年生に聞いてくれる辺り、やっぱり田中は優しい奴だと思う。つれてきて良かった。主将さんの顔も分かんないんだし、知り合いが隣にいるのといないのとじゃ随分違う。
「おー田中か。珍しいな」
「俺じゃなくて、こっちっス」
そうして指さされるわたし。集まる視線。なんていうか、優しそうな人だ。雰囲気がそう言ってる。とりあえず、田中の手は払い落としておいた。人を指さしちゃいけないって小学校で習わなかったかなあ田中よ。
「あの、今日男子バレー部見学させてもらいたくて」
「見学？ いいよ勿論。マネージャー希望かな？」
「まだ、決めてはないんですけど」
「そっかそっか。でも態々休み時間に言いに来るなんて律儀だね」
「そうですか？」
「今までも見学はあったけど、始まる前に体育館で言われるのが普通だったからさ」
「そうなんですか」
「うん。じゃあ放課後、待ってるよ」
「はい！ 宜しくお願いします！ 態々お時間ありがとうございました！」
「はは、うん。こちらこそありがとう」
手を軽く振って、主将さんは教室に戻って行った。最後笑われたのと何故お礼を言われたのかがよくわからないけど、とりあえず今日の見学は行けることになったし！
「ありがとね、田中」
「おう。けどよ、お前最近俺の使い方荒くね？」
「自覚あったんだ」
「やっぱりそうなのかよ！ やめろよ」
「てへぺろ！」
「……」
「無言止めてください無言は」
「……」
「どうしたら許してくれる？」
「坂ノ下で肉まん」
「部活後？」
「おう！」
「りょーかいっ！」
そういえば田中の大事な早弁タイムを奪ってしまったことになるのか。それに比べたら肉まん一個なんてお安いご用だ。いつも我が儘聞いてもらってるし、結構感謝してるんだからね！ 絶対に言ってやらないけど。
130407