あれから一度も話しかけられてない。「だって」、なんて言い訳みたいで嫌だけど、でも、急にあんな態度されて、今まで何ともなかったのに、自分でも驚くくらい痛手をおってて、何だか見かけても、またあの目で見られるんじゃないかって。自分らしくなくて、もうどうしたら良いかも分からなくて。年下相手にこんな乱されて。
「元気ないねー」
「なっちゃん」
「なんかあった? わたしでよければ聞くよー」
前の席の椅子を引いて腰掛けるなっちゃん。あ、なっちゃんっていうのはわたしの友達で長い付き合いなの。
「なんかねー失恋?」
「えっ恋してたの!? 誰に!?」
「一年」
「まじか!」
てか早く言いなさいよ、とバシンと叩かれた。肩痛いよなっちゃん。
「もうスピード失恋なの! 聞いてよ!」
「聞いてるじゃん……」
ということでこれまでの経緯を全部話した。一年の影山なんてなっちゃんは知らなかったけど(そりゃ私もこの間まで全然知らなかったんだし)、認知してるかどうかなんてこの際どうでもいい。
「でも、気付いたら失恋してたとかはつも災難だね」
「元気がないのもわかるでしょ?」
「じゃあさ、今日カラオケ行かない!? ぱーっと歌って気分転換に!」
「うん、行くー」
今は気が乗らないけど、なっちゃんの言うとおりわたしは少しでも早くいつものわたしに戻るべきなのだ。カラオケに行ったら今は曇ってても気分晴れるだろうし。
*****
「ありがとね、なっちゃん」
「何が?」
「気遣ってくれて」
「そんなことしてないよ、わたしがカラオケ行きたかっただけ!」
隣で笑う友達に、わたしはまた助けられてる。いつか、ちゃんとお返しができたらいいな。
影山くんは普通の友達でいいんだ。彼女がいるからと言って話に行くのを遠慮する必要はない。まずはあの一瞥した理由を聞かなきゃ。自分に非があったなら正さなきゃいけないし、影山くんを嫌な気持ちにさせたなら謝らなくちゃいけない。
「なっちゃん、わたし頑張るよ!」
「ん? 一歩前進か?」
「うん!」
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