「あれ、桐山さんは…?」

「聞いてない?今日風邪で休みだよ」

「そう、ッスか」

「(尻尾垂らした犬…)」


 桐山さん、休みか…。今日の昼はつまんねーな。久しぶりに日向とでも食うか。いや、その前にメールしてみるか。
 この間交換したばかりで、まだ一度もメールしたことがないそのアドレス。ていうか、休むってことぐらい、メールしてくれたっていいのに。


 大丈夫か、なんてありきたりな言葉しか思いつかなくて、それでもそのありきたりなメールを送るしかなかった。少ししてディスプレイに桐山さんの文字が表示され、ほんの少し浮かれながらメールを開く。


 普段から顔文字も絵文字も使わない人なのかどうかはわかんねえけど、ただの風邪だから大丈夫ってことと、飯持ってけなくて連絡できなくてごめんってことと、部活頑張ってっていう旨が記された白黒の文面だった。風邪のときですら俺に謝って、風邪なんだから自分のことだけ考えてりゃいいのに。変なところに気回しすぎなんだよ、桐山さんは。

 帰り寄っていいですか。その一文だけで返信した。返事は来なくて五時間目も六時間目もろくに身が入らない。(普段からあまり授業を聞いていないことは言うまでもないが)
 そんな気持ちのまま部活へ行っても、落ち着いてできるわけがない。悪い、桐山さん。折角頑張ってって言ってもらったのに。


「影山」

「あ?」

「お、お前今日いつもと違うから……んな睨むなよッ!」

「王様は今日桐山さんがいないから不機嫌なんでしょ」

「そういえばいない…」

「そんな訳あるか!」


 部活が終わって携帯を見ると桐山さんからメールが。風邪移したくないから、ごめんね。んだよ、来るなってことかよ。クソッ、どいつもこいつも。俺が桐山さんがいねぇからイライラしてるだと?ふざけんな。そんな訳ない、俺はもともとこういう性格だ。桐山さんも桐山さんだ。辛いなら甘えればいいのに。そのために俺がいるのに。いつもいつも思わせ振りな態度して期待させといてはぐらかして。


「お先失礼します!」


 門前払いされてもいい。俺が行きたいから行く。それだけだ。




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