「先輩!飯!」

「はーい今行くー」


 わたしが毎日影山の分のお弁当まで作るようになると、影山の方からわたしのクラスへ来ることが増えた。四時間目終了のチャイムが鳴って暫くすると、影山がわたしの教室まで来るのはもう恒例だ。勿論食べるのはいつもの中庭でだけど。だから、飯の時間です!早く行きましょう食いましょう!って感じで迎えに来る。犬みたい。


「完全に懐かれたね」

「そうみたい」

「願ったり叶ったりでしょ」

「えへへ、行ってきます」


 料理がとても上手って訳でもないからお弁当の中身がワンパターンになってしまいがちだけど、自分の分だけだったときよりは気をつけているつもりだ。最近はよくクックパッドを眺めてる。影山はよく動くし、健康体でいてほしいからできるだけ偏らないようにしたいんだけど難しい。


「なあ、なっちゃんさんよォ」

「何よ田中。いい加減他人の名前くらい覚えなさいよね」

「あいつら何処で飯食ってんだ?」

「中庭。言っとくけど邪魔しないでよ」

「別にしねーよ。興味ねーし」

「ならいいけど」


*****


 大きめのお弁当を広げて黙々とご飯を頬張る影山。完全に餌付け成功だ。なんでもかんでも美味しそうに食べてくれる人はいい。影山は割と真顔に近いけども。


「美味しい?」

「旨いッス」


 多分影山は、不味い物でも食べるんだろうけど、そんなときはきっと顔はしかめっ面で、しかも食べるのもローペース。そんなんだと思う。あくまでこれはわたしの推測だけど。だから少なからずわたしの作るお弁当は美味しいって思ってもらえてるんだと思う。そういうことにしとこう。


「影山の好きな食べ物って何?」

「温玉のせポークカレーです」

「カレーか…カレーはお弁当に入れられないしなあ。じゃあ今度家おいでよ!カレー作って待ってるから!」

「マジっすか!?……いや、そんな簡単に家あげたりしないでくださいって言ったじゃないッスか…」

「うーんでもまだいつ作るって決めてないし」

「そういう問題じゃなくて!」


 あはは、影山このネタになるとちょっと不機嫌だ。影山なら本当に大歓迎なんだよ。でもそんなこと言っても「またそういうこと言って!」とかって怒られそうだから今はやめとく。


「何、笑ってるんですか」

「いや、かわいいなあと思って」

「からかわないでください!俺は桐山さんを思って!」

「うん、ありがとう。でもいつか、絶対食べに来てね。美味しいカレー作れるように練習するから」

「そんなこと言われたら、勘違い、しますよ」

「いいよしても」


 勘違いしてもいい。してくれていい。わたしは全然構わない。


「なーんてね。あ、そうだ。今更だけどアドレス教えて!」


 でも今は、まだ心の準備ができてない。もう少し、もう少し。



 携帯に1つアドレスが増えたからと言っても、お互いにメールはしなかった。




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