「桐山さんって田中さんと仲良かったんですね」
「あー、1年から同じクラスだからね」
「そうなんスか」
「うん」
束の間、沈黙。今日の影山はどこか変だ。何が変と言われると、言い当てられないのだけれど、それでも何か感じる違和感は拭い去れない。
「どうかした?」
「どうもしてないッスよ」
「ほんとに?」
「ほんとに」
「わたしの目見て」
「……」
全然顔を合わせようとしないから逆にこっちからガン見した。最初の方は頑張ってわたしの目を見ていたけどその瞳はゆらゆら揺れていて。遂には目を逸らされた。
「何かない訳ないよね。わたしが何かしたなら言って」
「……」
「影山、」
「……先輩この前、部活見学してた時、」
「うん」
「……」
影山の唇はふるふる震えている。見学した時、何か気に障ることでもしちゃったんだろうか。田中とギャーギャー喚いてたから、見学の癖に騒がしいとか。
「…誰、見てましたか」
「へ?」
「だから、その…」
「見学中わたしが誰を見てたか?影山に決まってるじゃん。ダメだった?」
「!……ダメじゃないッス」
「今日の影山おかしくない?どうしたの?」
「何にもないですから!」
やっぱり変だ。何かを隠すので必死って、そんな感じ、する。心なしか顔も赤いような気がするし。
「熱でもあるんじゃない?」
「うわっ、やめろよ!」
「あ、ごめ、」
「……すんません」
影山のおでこを触ろうとしたら手をはたかれてしまった。多分影山も咄嗟のことで、敬語が外れてしまったんだと思う。そりゃ嫌だよね、得体のしれない先輩に触られるとか。良心の押しつけは、したくないと思っていたのだけど。
「バレーできなくなる前に、保健室行った方がいいと思うよ!そろそろチャイム鳴るから、わたし行くね」
「……そんなんじゃないッスから」
廊下は走るところじゃない。分かってるよ、分かってる。
130512