「はー眠ぃ〜」

「どうしたんだよシュージン。そんなにネタ浮かばなかったのか?」

「あお、……じゃなくて杉田さん、今日仕事は?」

「お休み」


 わたしが仕事場でクイックル掛けてるのを知っておきながら態々仕事があるのか聞いてくる、それから言い掛けた「あお」という言葉……もしかして蒼樹嬢と電話する件かな、でもそれをそのまま言っちゃうと何で知ってるのかって不審がられるから……


「蒼樹嬢」

「!?」

「に、この前会ったんだけど、もしかして関係ある?」

「うっ……蒼樹さんと同盟結んだ」

「えっ何で!?」

「お互いの漫画の為参考にしようって。それで朝まで電話。眠ぃーよ」

「朝までって。それ、見吉が知ったら怒るだろ。昨日も俺に電話あったし」

「やっぱ怒るかな〜別に浮気してる訳じゃないんだし漫画の為なんだけど……」

「ちゃんと言った方が良いと思う。香耶ちゃん理解あるし説明すればわかってもらえると思うけど。まあたまに爆発しないとは言いきれないけどね。2人が言うなって言うなら言わない」

「ば、爆発……とりあえずは言わない方向で」

「わかった」


 何で男の人ってこういうのわかんないのかな。一言言っておくだけでいいのに。この先どうなるかも知らないで、呑気だわ。


「でも、漫画家同士の意見交換ってすごいプラスになる。特に異性。お陰でこれからやるネタの方向性見えてきた」

「漫画の為なら仕方ないけど見吉を泣かすようなことにならないように気を付けろよ」

「サイコーくん見吉のこと思ってくれてんだ、ありがとな」

「一緒にやってくれてる仲間だし、面倒な事なヤだって言ってるだけ」


 流石サイコーと言うべきか。手厳しいなあ。まあ、そんなもんか。


「で、方向性って?」

「うん。やっぱ『ジャンプ』でやるなら『ドラえもん』だと思うんだよな。『ドラえもん』ってよく読むとブラックな話もあるじゃん。俺が得意なSF系も活かせる」

「なるほど。確かにギャグならエイジの言うエグイのもできる」

「ただ『便利な道具を出せるキャラ』をそのままやっちゃうとパクリになるから、発明家のお爺ちゃんとその孫の話にする」

「そうか!ありがちな設定なだけに逆にパクリにならない!」

「だろ!」

「当然主人公は孫の方で小学生。孫の為だけに発明してて家族はその事を知らない。お爺ちゃんは孫の担任の美人教師が大好きでちょくちょく学校に来ちゃう。惚れ薬を発明して飲ませようとしたり」

「はは、エロジジイかよ」


 そう言いつつサイコーの声色も顔も随分と楽しそうだ。こういう男同士の話はやっぱり盛り上がるんだろうな。わたしには真似できない。サイコーを楽しませることなんか、出来た試しがないもの。


「で、その女教師だけには発明の事バレてて色んな騒動になった挙げ句最後にはいつも発明品が壊れるか女教師に没収されて説教」

「かなりベタなギャグ漫画だけど出てくる発明のアイデア次第で面白くなりそうだな」

「だろ!悪の発明家出せばバトル化もできるしイケると思う!」

「漫画に夢中で身を滅ぼさないようにね」

「蒼樹さんの話か肝に命じておくよ」

「サイコーもね」

「へ、俺も!?」

「そ、サイコーも」


 さて、わたしはこれからやってくる四人の喧嘩にどうやったら自分の立場が良い方に傾くか、考えることにしますか。……と言ってもあまり覚えていないんだけど。




131027
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