今日もネームプレートを首から提げる。わたしが此処にいるわたしであるという証明ができる、ただ1つのものだ。編集長に言ったところすぐに作ってくれて、集英社一階に入るとすぐに掛ける。そうすれば、受付のお姉さんも誰もわたしに口出ししてこないからだ。ネームプレートに書かれているのは週間少年ジャンプ専属掃除婦、なのだが。


「おはようございますー、あ、今会議中ですか?」

「うん、連載会議。杉田さんなら特別枠で入れそうだよね」

「何言ってるんですか雄二郎さん!あの頭の堅い編集長がそんなことする訳ないじゃないですか!」

「…編集長がいないからって発言には気を付けてくれよ…」

「今の言葉は非公式です!」

「……」


 はぁ、と深い溜め息を吐いた雄二郎さん。少し見渡せば心配そうな顔でこっちを見ている服部さんと目が合った。


「杉田さん」

「何でしょうか、山久さん」

「今度静河くんの家行くんだけど杉田さんも一緒に行かない?」

「何でわたしが…」

「だってこの前新妻くん家行ったんだろ?同じじゃん」


 静河流……斜本の作者でサイコー達と同じ、(18)埼玉。合わなそうだし、何より無口でコミュ障だし怖いし…


「ごめんなさい、静河さんはちょっと…斜本書いた人ですよね?うーん…」

「あれ、杉田さん読んだんだっけ?」

「いや、ちゃんとは読んでないんですけど、新妻さんが読んでいる時にちら見したので」

「そう。無理矢理誘うとまたセクハラとか言われかねないから今回はやめとくよ」

「はい、すみません」


 山久さんとの会話が終わると丁度会議を終えた方々がぞろぞろと出てきた。そうして班会議が行われる。さっきまで話していた人たちがグッと集まって3つに分かれる。なんだか疎外感。女子のグループに入れてもらえなかった人間みたい。仲間にいれてもらえなかった同じような人も数人いるけど、でもお互いに意識はしているけど関わらないのも、なんだか似ている。この場合編集長達だからむやみやたらに関わらないのは当たり前なんだけど。
 わたしもサイコー達の連載がどうなったのか、知りたい。けど、終わるまで待たなきゃだよなあ。


*****


「ただいま」

「「「おかえり」」」

「結局読者が決めることになったね、TENとFuture watch」

「会議中に直子に忍び込んでもらって港浦さんより早く情報もらおうかと思った」

「なんでまたそんな…」


 雄二郎さん達と同じこと言ってるよこの人達…だからわたしにそんなことできる訳ないって!


「だって港浦さん誤魔化すだろー?この前の月例賞の時も一回お預けくらったし。打ち合わせの時Future watchのことも聞かないとな、サイコー」

「うん」

「ま、今回は包み隠さず言ってたと思うよ?」


 サイコー達に電話してるのを盗み聞きしただけなんだけど。盗み聞きって言うと悪そうだけど、編集部で堂々もみんな電話してるからね。耳に勝手に入ってくるんだからね。亜城木に電話かけてる港浦さんに神経尖らせてたのは認めるけど。


「なら良かった」

「連続読切掲載なんて異例だし、凄いよ」

「最高の結果だな」

「だな。Future watchになるに決まってる」




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