「わー香耶ちゃん!いらっしゃいー」

「直子ちゃん!」

「で、大変申し訳ないんだけど実はもう着替えがなくて、もしよかったら洗濯させてほしいんだけど…」

「全然オッケー!ということで真城、高木。わたし来たばっかりだけどもう行くから!」

「そういうことだから!」

「おーおーいってら」

「騒がしいのがいなくなってせーせーするよ」

「なにをー!?」

「はいはい、もういいから。いってらっしゃい」

「いってきまーす!」


 かなり図々しいことだってわかってる。コインランドリーでやるべきなの、わかってる。でも、所持金には限りがあるし、此処じゃ親のような存在の人もいない。爪に火をともして生活するしかないのだ。今家出中ってことになってるから、お金に限りがあるの、きっとわかってくれるよね。


*****


「本当にありがとうね、香耶ちゃん」

「いやいや。わたしにできることなら何でも言って!あ、そうだ!もう着ない服とかあげようか!」

「いいの!?」

「だってどうせ捨てちゃうし」

「うわーんありがとー」

「ちょ、直子ちゃん、抱きつくなって!」


 だって香耶ちゃんが良い子すぎるんだもの、そりゃ抱きつきたくもなるよ。やっぱり持つべきものは友だなあ。
 洗濯が終わるまで、いらない服をもらえることになった。香耶ちゃん一杯服持ってそうだしなあ。


「あった、これとかどう?」

「えっこんなに可愛いのいいの?」

「うん、胸の周りキツくなっちゃって…」

「……」

「なに、その目は」

「巨乳めっ!」

「巨乳になりたくて巨乳になったんじゃないし!」

「巨乳はみんなそう言うのよ!」


 ギャーギャーワーワー言いながら、香耶ちゃんのもう着ない服をもらった。伸びてる胸の辺りが私にはちょっと大きいけど服のレパートリーが少ない今となっては全てありがたい。


「ちょっと香耶、お友達来てるなら言ってよ」

「あ、ごめん、忘れてた」

「はいこれ。紅茶にしちゃったけど大丈夫?」

「ありがとうございます、大好きです!」

「そう?なら良かった。ゆっくりしていってね」


 香耶ちゃんのお母さんも原作通りの優しい人で、なんだか安心してしまった。


「香耶ちゃん家、凄く居心地いいね」

「そう?」

「うん。ずっといたくなる」

「じゃあもう今日泊まっちゃえば?」

「いや、そんな訳には」

「うちは全然いいよ!1人増えたって2人増えたって変わんないし!」

「でも、サイコーが待ってるから」

「…?そう」


 あまり納得できない様子だけど、多くを語る訳にはいかない。それに、連絡せずに外泊なんて心配するだろうし、許してくれなそうだし。心配かけないって、決めたんだ。


「だからまた誘って?香耶ちゃんとお泊まりとか楽しそうだし」

「うん!じゃあまた今度にしよう!」


 良かった、香耶ちゃんが本当に良い子で。洗濯終わったみたい!と香耶ちゃんは階段を下りていった。


「じゃあわたし帰るね。ありがとう、乾燥まで」

「大したことしてないから!また洗濯溜まったら来て良いからね!よし、じゃあ行こう!」

「1人で帰れるし、大丈夫だよ?」

「…あたしだって高木に会いたいし。ね?いいでしょ?」

「そうだね、一緒に行こうか」


 赤く染まった夕暮れの中をたわいもない話をして帰った。仕事場に着くと丁度シュージンが帰るところだったらしく、香耶ちゃんは今からまた送ってもらうらしい。いいね、幸せそうで。


「サイコー、ただいま」

「おかえり」




130114
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