「じゃあ女将さん!金造借りてきます!」
「ちょ、お前、待てって…!」
「行ってらっしゃーい、ごゆっくり〜」
*****
「どういうことだ…」
「金造、誕生日おめでとう」
「お、覚えててくれたんか!メール来てなかったから忘れたのかと…!」
「わざとよ、わざと」
仕事場である勝呂家の旅館から(金造は祓魔師だけど、京の祓魔師さんはよく旅館にいるの)2人で抜け出して、ぶらぶらと町を歩いていた。勿論手は繋いでいる。恋人つなぎだ。恋人つなぎの方が金造の手にフィットするから好き。
「いつもはゆっくり出来ないじゃない?だから女将さんに頼んでお休み頂いたの」
「そうか。でも、何処行くん?」
「特に決めてない。金造は行きたいとこある?」
「特になぁーんも」
「だよねぇ…」
急にごめんね、無意識に滑り出た言葉に何でお前が謝るん、俺は名前がこうして祝ってくれるだけで嬉しいんや、と。それだけでわたしの心もぽかぽかと温かくなった。
結局街をぶらぶら歩くことになった。人通りはそんなに多くなくて、いつもの忙しさとは違う、ゆったりとした時間の流れを感じる。空は青く澄んでいて、白い雲は悠々と漂い、時折肌寒い風が通り過ぎる。こうやって過ごすのはいつぶりだろうな、仕事は嫌いじゃないし、やりがいのあることは好き。でもたまにはゆっくりするのもいいよね。
「あ、この店、」
「昔よく来たなぁ」
普段はあまり通らない道を歩くと懐かしいお店を発見した。わたしも金造もまだ幼い頃、よく通った駄菓子屋だ。みんなでお小遣い貰って、柔造さんと廉造くんと真剣にお菓子を選んでいたものだった。
「これ下さい」
「なんや、買うんか?」
「うん、なんか食べたくなっちゃった」
昔懐かしの…何だっけこれ、名前忘れちゃったわ。爪楊枝に刺さってるきなこ味の。先が赤ければ当たりでもう一本もらえるヤツ。きなこ棒、だっけ?
「おばさん、俺も」
「はいよ」
「あーやっぱ当たんないかー…」
「お前さん達もしかして名前ちゃんと金ちゃんかい?」
「お、おばさん覚えてるの?」
「金ちゃん言わんでええー!」
「覚えとるよ、今日は柔ちゃんと廉ちゃんはおらんの?」
「今日は2人でデートだから」
「若いのはえぇねえ」
立ち話を少しして、じゃあおばさん、またね、なんて手を振って歩き出した。また来ることなんて、あるのかわからないけど。廉造くんと柔造さん連れてきたいなぁ、とは思う。
「舞妓さんはやっぱり綺麗だねえ」
「まぁでもアレやろ?お客さんやろ?」
「そうだけど、でも綺麗じゃん」
本物の舞妓さんは外に歩いたりはあんまりしない。だから見かけるのは旅行を楽しむ人達だ。
女将さんのところで働いてなかったら…いや、無理か。舞妓さんになるには小さい頃からの修行が必要だもの。
「もしかして名前、着たいんか?」
「ううん、そういう訳じゃない」
「俺はそんままの名前が好きだよ」
照れくさそうになんて一切しないでさらっとそんなことを言ってしまう彼がすき。彼が着飾らないわたしを好きなのは百も承知だけどなんかいつも通りに「知ってる」とか言えなくて、繋いでる手を握り返すことしかできなかった。何でだろう、今日が金造の誕生日だからかな。
「ねぇ金造」
「ん?」
「金造はさ、顔もいいし格好いいからみんなが見るんだよ」
「うん」
「わたしは金造の彼女だからそんなこと気にしなくていい筈なんだけど、堂々としてればいいのに、やっぱりどうしてか気になっちゃうの」
「……」
「だから金造の誕生日とか言って、本当は金造を独り占めしたかったの。……最低だよね」
金造の大事な日なのに。生まれた日なのに。一年に一度しか巡ってこないこの日を、わたしは自分の為に使っていた。彼女なら、彼女なら尚更金造のこと考えて、金造の為にプレゼント用意したり、ケーキ焼いたり、精一杯の想いを、生まれてきてありがとうって、言葉にして、伝えるべきなのに。それなのにわたしは、
「何ゆうとんの」
「へ」
「俺はお前といられるだけで嬉しいんや。しかも、他の女に嫉妬してるとか、可愛すぎるわ!」
「…金造って、変?」
「いや、これ普通やから」
「そう…」
そして町中でぎゅーっと抱きしめられ、いつもだったら抵抗するだろうに(町中は恥ずかしいからね)、今はそんな気にならなかった。放心状態に近かったのかもしれない。まあでも、金造が嬉しそうにしているから、もう何でもいいや。
「金造」
「ん」
「生まれてきてくれてありがとう」
抱きしめられていて唇には遠いので彼の首筋にキスを落とした。
Off
(後で八百造さんにも挨拶しにいこう)
□□□□
はい大遅刻。でもネタ出来てたから書き上げたかった俺頑張った。金兄はサブキャラの癖にイケメンすぎると思います。京都編終わったら出てこなくなるかな、いやずっと出てきてほしい!金兄のピンで髪とめてるとこマジ可愛いです、あ、ネタんなかいれりゃあよかったでもなんかもうめんどくさいからいいや
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