はじめましての続き








「おかえりー、マスター」
「え、え?レンきゅん!?」


 学校から帰るとレンきゅんが待っていた。あれ?昨日まではパソコンの中にいたのに具現化出来るの!?ガサッとレンきゅんが入っていた箱を乱暴に掴み確認してみるけどそんな記載は一切無い。寧ろこれはパソコン内のソフトウェアです、なんてご丁寧に注意書きがあるくらいだ。


「な、なんで…」
「マスター、嬉しくない?」
「いや、嬉しいよ!すごく!」


 その言葉を聞いて嬉しそうにくるりん、と一回転してみせたレンきゅん。なんて可愛いんだろう、少し頬を赤く染めてえへへ、とはにかんでいる。わたしは荷物を全て下ろし、恐る恐るレンきゅんの肩に触れた。


「さわれる…」
「マスターっ!」
「わっ」


 ぎゅっと抱きついてきたレンきゅん。なにこの可愛い生き物。レンきゅんは前から可愛かったけど、これは、なに、わたしを殺す気かっ!


「ま、マスター鼻血…」
「うん、」
「はいティッシュ。大丈夫?」
「大丈夫、ありがとう」


 しかもかなり良い子ときた。これはその、あれだね。わたしに何されても良いってことだよね。なんて都合の良い解釈をして目を輝かせていたらまたもやレンきゅんに心配されてしまった。マスターの普通がこれなんだよと教えてあげなきゃね。


「バグか何かかなあー」
「多分そうだと思うよ。なんかね、マスターに会いたいなぁって思ってたら出れたの!」
「会いたいって、思ってくれたの?」
「うん、マスター学校行っちゃって、一人詰まんなかったから」
「そっか…」


 そうしてぎゅっと抱き締める。レンきゅんが此処にいることを確かめるように。学校には行かなきゃいけないからこれから寂しい思いさせちゃうかもしれないけど、わたしはいつもレンきゅんの側にいるからね。そんな思いを込めて。
 レンきゅんにはプログラムされてる対話以上の感情を持っているらしいことは前から気づいてた。 会話に不自然な点が全く無いから。そして今わかるように体温があって温かい、機械なのに。まるで人間みたい。もしそうなら食事は…出来るのかしら?
「レンきゅん、お腹空いたりする?」
「ちょっと、空いてるかも」
「本当!?ご飯食べれる系!?」
「多分食べれると思う。わかんないけど…」
「じゃあレンきゅん初ご飯の為の買い出し行こう!」
「やった!マスターのご飯だー!」


 その辺を跳びはね無邪気に笑う様は純粋な子供の姿。そう言えばSPICEとか歌ってんだよな…という思考が脳内をよぎったけれど、すぐに隅に追いやった。いろは唄を歌ったのは同じ鏡音レンだがわたしのレンきゅんじゃないから、だからいいの。


「んー、ちょっと大きいかなー、ま、袖捲ればいいよね!レンきゅーん!これに着替えてー」
「え?どうして?」
「ズボンはそのままでいいけど、レンきゅんのその頭は街じゃ目立っちゃうから、フード」
「ふうん」


 あまり腑に落ちないような感じだったけど、文句言わずに着替えてくれた。本当に良い子だ。スーパーには近所のオバチャン達だっているし、金髪…というか寧ろ黄色の頭の少年を連れていたら視線も凄いだろうからね。


「さぁ行こうか!」
「うん!マスターご飯何にするの?」
「レンきゅんは何食べたい?」
「マスターの作ったものなら何でも!」
「やだ可愛い!」
「ぅ、マスターくるしいよぉ…」



110917

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