かれこれもう三時間は経ったかな、少しお腹が空いてきたような気がしないでもない。本当はずっと部屋に籠っていようかと考えていたんだけど、お腹が自己主張をしてきたので仕方なく食堂まで来たの。それからショートケーキとブラウニーとチーズケーキとブルーベリーのタルトとか思い付くデザートをジェリーさんに驚かれるくらい頼んで、それからそれを平げて今に至る。今日は非番。相変わらず大食いの白髪少年が斜めの席からこっちの様子を伺っている。最近のお気に入りはラーメンみたいね、よく食べてるのを見かけるもの。何の味までは知らないけど。
 空になった平皿を見つめてくだらない自問自答を悶々と繰り返す。

 風の噂で聞いた。リナリーとラビが手を繋いでいたらしい。コムイさんという存在があるのにラビったら勇者だなあ。わたし優しいからコムイさんには言わないでおくね。それに、リナリーの可愛さは女のわたしでも惚れそうになるくらいだから好きになるのもわかる。でも、本当に手を出しちゃうなんて、ラビったら勇者!(大事なことなので二回言いました)そのふたりが、やっと任務から帰ってくる。2,3時間後かな。ラビはリナリーと手を繋いでいるんだろうか、それともただの噂なのかな。でもやっぱりラビだったらそんなことするかもしれない。今何処で何してるのかな。きっと電車だよね。空いてたらボックス席でいちゃこらしてるかもしれない。そんなこと、無いといいんだけど。日頃のラビの行動からして完全に否定することは不可能だ。ああ、でももしかしたらその辺にいるお姉さんにストライクしているかもしれない。
 あああああああああああああああああああああっわたしだってこんなにラビが好きなのに!ラビはいつだってわたしを好きと言ってくれるけど、いつだってわたしだけを見てくれていることはなかった(ように思う)。いつだってわたしばっかりがラビを好きで、ラビは浮気とまでいかないけどずっとふらふらしてて。なにこれ。なんかわたし凄く不憫な子みたいじゃない。


「名前っ!?」


 斜め前の白髪少年が立った。口にはみたらしが沢山入っている。口に棒入れたままにしてたら危ないよアレン。


「何で泣いてるんですか!」
「…なんでだろね?」


 自分が涙を流しているのは知っていた。テーブルに大きな水の粒が落ちてくるのが見えたから。あーあ、ふざけんなし馬鹿兎。こんなに彼女を不安にさせるって無いよ、無い。ぼろぼろ人前で泣いちゃってさ。
 あたふたしているアレンはわたしの周りをうろうろ。何してんの、ちょっと気が散るんだけど。


「ちょっと待ってて下さい、さっき到着したみたいなので今ラビを…」
「やだ」
「え?」
「呼ばないで。絶対」


 こんな情けない姿、見せられるもんじゃない。恥ずかしすぎる。何不安になってるのわたし、何泣いてるのわたし。ラビがそんなわけないじゃない、いくらリナリーが可愛いからってそんなこと…
 有り得るから悲しくなるんだよ。


「はああああああああああ」
「盛大な溜め息ですね」
「煩いな、ほっといてよ」
「落ち着くまで僕がいてあげます」


 なんだそれ、そんな上辺だけの優しさはいらないよ。わたしは、わたしは、ラビの一番になれたらそれだけで…


「もう駄目だ」


 いっそのこと嫌われたい。そしたら諦めがつくのに。こんなに傷つかずにすむのに。
 嗚咽が酷いわたしの背中をさすってくるアレン。そんなオプションいらないし、聞いてないし…


「何やってるんさ!」


 背中から大好きな声が聞こえるけど決して振り返らない。それはラビへの当て付けでもあるし、この酷い顔を見られたくないからでもある。
 アレン何泣かしてるんさ!いや僕じゃないですし!なんて会話が耳に入る。泣かせたの、どっちかと言えばラビだよね。
 目をごしごしと擦り、くるりと振り返る。もうどうにでもなれ。


「馬鹿兎」


 そう言って頬を叩いた。乾いた音が食堂に響く。近くにいたファインダーが振り返った。私達、注目の的よ。さあ薄情なさい!何が何だかわからないなんて言わせやしないんだから。


「リナリーと手繋いだ?」
「え?あっ…」
「知らない、ラビなんて」


 そう言って食堂を出た。トイレにでも籠ってみようかしら。そしたらラビは来れないし、実は朝から何も出していなかったからそろそろ行きたい気分だったの。雰囲気壊れるから言わなかったけど。
 可愛い女の子と手繋いだくらいでこんなに腹を立てているわたしって何だ。心が狭いのか、独占欲が強いのか。普段、お姉さんにストライクするぐらいならこんなに怒ることはない。知っている人だから?リナリーが人一倍可愛いから?ああ、もうなんなんだ。ラビもわからないし、自分のこともわからないなんて。


「名前、開けて!」


 噂の可愛子ちゃんがやってきました。ドンドンと個室の扉を叩いています。この可愛いリナリーをパシリに使ったんか馬鹿兎ぃいいいいい!
 バタン、と音を出して出た後、違うの、誤解なの!と繰り返すリナリーの話を手を洗いながら聞いた。

「手を繋いでたっていうのはその、誤解で!本当は、わたし足に怪我しちゃってラビが運んでくれてただけなの」
「…、?」


 そう説明するリナリーの足には包帯が巻かれている。
 で、何?運ぶ?手繋いだって話は?何処からきた?え?てことは何?手を繋いでなくて、運んでもらった?どうやって?抱っこ?人を運ぶのに抱っこってそんなないよね。じゃあおんぶ?っていうより姫抱き!?


「うわああああああああああああああああああああああああ」
「ちょっともうやだ名前?落ち着いて…」


 あれだ、わたしは大きな勘違いをしていた。そして手を繋ぐよりハードルが高い姫抱きをしていたけどそれはリナリーが怪我をしたからで…。勘違いもいいとこだ、恥ずかしい。穴があったら入りたいけど生憎此処はトイレだから下水に繋がる穴しかない。しかも入れない。


「リナリー、ちょっと失礼」
「……?いたっ」


 濡れたままの手でリナリーのおでこにクリーンヒットさせた。まあ所謂でこピンね。だって、姫抱きなんて羨ましい。わたしだってしてもらったことないのに。


「ごめんね、わたしが悪かった。でもでこピンは許してね」
「痛いわ…だけど名前だから許してあげる」
「良かった、ありがとう」


 おでこをさする手の向こうには赤く色付いた皮膚が見える。こんな可愛い子だもんね、仕方ないか、ラビがお姫様抱っこするのも。


「名前…?」
「何で最初から本当のこと言わないのっ!」


 女子トイレから出るとラビがいた。待ち伏せしてたのか。変なとこで待たないで欲しい。


「本当のことって?」
「だからリナリーとは手繋いで無いんでしょ!」
「繋いださ?」
「えっ?」
「リナリー忘れたんさね、お姫様抱っこする前に手を取ったんさ」
「…嬉しそうに話すなっ!」


 また泣いちゃおうかな、わたしの彼氏可笑しい。もう一発平手打ち入れてあげようかしら。




少女A苦悩


□□□□
ふぃー、長い。(よね?)全然リナリーに嫉妬してないよー()こんなんでいいかなぁ、ラビ好きさんのあの人へ!

110904

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