「四ッ谷せんぱー……」
「文ちゃんー!」
「失礼しました」
「ちょっと待て中島ァ!」
「なあんだ、彼女さんかと思いました」
まあ実際、四ッ谷先輩に彼女とかいたらびっくりするどころじゃないけどね。
いつものように部室に入ったら四ッ谷先輩は普段使っている椅子に座っていたけど、いつもと違うところがあった。女の人が四ッ谷先輩に寄りかかっていたんだ。
此処の制服を着てるから生徒だろうけど、ナイスバディで色気むんむんだから多分、高3かなと思った。
「三ツ矢名前です」
「へえ、いとこなんですかー!」
四ッ谷先輩の腕にぎゅっとしがみついてニコニコしてる三ツ矢先輩。わたしが想ってた通り、高3だった。
「三ツ矢先輩も、怪談好きなんですか?」
「いやいや。わたしはあんなもんにとりついたりしないわよ。怪談なんて恐くもないから文ちゃんの悲鳴好きに貢献してあげられないんだけどね」
「はあ」
発言がもう彼女みたいなんだけど。昔からこんな感じだったようで四ッ谷先輩は嫌がる素振りを見せない。
「お二人は血は繋がってるんですか?」
「よく聞かれるけどね、普通に繋がっちゃってるのよねー、これが」
これは、赤の他人が良かった、というようにもとれるよ…な?
「文ちゃん、これあげるからちょっと出てって」
「へーい」
「(四ッ谷先輩が素直に言うことを聞いた!?)」
三ツ矢先輩から差し出されたのは好物のおしるこの缶。それを受け取って本当に出て行ったけど、どこ行くつもりなんだ…?
「さーて真ちゃん」
「はい、何でしょうか…」
「文ちゃんに彼女いたことってあると思う?」
「ない、です…」
いきなり何を聞くんだろうこの人は。それにさっきと目つきが全然違う。
「じゃあ、わたしに彼氏いると思う?」
「…はい」
「残念ながら、わたしこの歳まで彼氏いたことありませーん!彼氏いない歴=年齢よ」
ずい、更に身を乗り出して、三ツ矢先輩は語る。これは四ッ谷先輩に近いかもしれない。聞きたくない訳じゃないけど、脳が三ツ矢先輩の声に支配されて、もう、それしか考えられなくなる…。
「これが、どういうことかわかる?」
「え?」
「文ちゃんってイケメンな訳じゃないでしょ?だから、女の子が近付くこと、あんまり無かったんだけど、それでもあるのよね、怪談好きの女の子とか。怪談が好きなのに、文ちゃんが好きって勘違いしちゃう子」
「……」
「わたしがそういう子達が寄り付かないように、色々してたから。文ちゃんってほら、怪談しか興味ないから、そういうの疎いのよ。それに、きっと断るのも面倒で何もしないまでもOKしちゃいそうじゃない?」
そこで同意を求められても困るんだけどなあ…。そんなことを思いながら、脳へと届く三ツ矢先輩の声を、ただただ聞いていた。
「だから真ちゃん、わたしの文ちゃんに手出さないでね?」
「いや、わたしはそんなつもりは、全く…」
「いつも一緒にいると好きって勘違いしちゃうもんなの。だからそうなる前に真ちゃんに忠告しにきた」
三ツ矢先輩の目がギラリと輝いて、その視線でわたしを刺した。ってか怖い、この人も変人だ…!何で今日に限って1人で部室に来たりしたんだろう…数分前の自分を呪いたい…
「文ちゃんに手出したらただじゃおかないから。文ちゃんが悲鳴を聞くことに関して誰よりも真面目なら、わたしはね、文ちゃんに関して誰よりも真面目よ」
遺伝子
(あの二人には、同じような血が流れてる)
三ツ矢先輩が部屋からでる時、わたしにこう耳打ちをした。
『いつか、結婚式に呼んであげるね』
□□□□
やっとこさ三ツ矢ちゃんの話書けたよおおおお>< 最後が一番怖いです。多分まこっちゃんは背筋凍っちゃったんじゃないかな!何処までしてよっつんとくっつきたいんだ全くwよっつんは怪談の為に罪を犯すことはないけれど、三ツ矢ちゃんならよっつんの為に人殺すのなんて容易でしょうね。
110709