隼人に憧れていた。容姿に、その従順さに、強さに、全てに。わたしが行き着いた先は煙草だった。煙草を吸ってりゃ隼人のようになれるだとかそんなことは思っていない。わたしだって其処まで馬鹿じゃない。昔は煙草が嫌いだった。たまたま乗った車両が喫煙車両だった時、息が詰まるかと思った。でも今じゃ違う。


「また煙草変えたの?」


隼人を追いかけて、吸い始めた煙草。最初は弱い奴から…。段々強いものに変えていって隼人と同じものを吸っていた時もある。
嬉しくて仕方がなかった。お揃いだって。やっと隼人と同じ場所に立てたんだって。
でも、実際は違った。わたしは無理をしていたんだ。隼人の前では必死に咳をしないように耐えて耐えて。でも、隼人は次々に変えていってしまう。
わたしはもう、追いつけなくなった。


「ちょっとは身体いたわりなよ。沢田くんに迷惑かかっちゃうよ?」


否、もとから追いついてなどいなかった。初めから、わかっていた。隼人が遠い存在にあることくらい、わかっていた。

うるせえ、隼人は一言そう返事をして大きく息を吐いた。空に新しい灰色が広がって、溶けた。


「それよりお前こそ煙草やめた方がいいんじゃ、────」


それ以上は聞きたくなかった。誰の所為でっ…。誰の所為?隼人の所為?いや違う。吸うと決めたのは自分だ。
隼人の言葉を途中で遮り蝕むようなキスをする。少し衝動的ではあったけれど大丈夫、わたしは隼人の特別で、わたしの特別は隼人。

ぷはぁ、唇を離した時の隼人はエロい顔をしていた。
余裕がないのはわたし、


視界が反転して、真ん中にいる隼人は変わらないけれど、その後ろには空がある。背中が生暖かい。


「ねえ」

「ぁあ?」

「わたし煙草やめてあげようか」


わたしに必要なのは煙草じゃなくて。隼人、貴方よ。



□□□□
最近短いのばかり。忠犬隼人だいすき

110703

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