「ずるいよねえ」


突拍子も無くこんなことを言った。いつものように俺の背中にぺったりとくっついたまま。


「何が」


実際のところ全く興味が無いのだが、返事をしてやる。構ってやらないとそのうち家出して静ちゃんのところに行くとか言い出すからだ。以前、冗談だろうと思ってほったらかしていたら、池袋で二人並んで歩いていたことがある。静ちゃんにとられるのはもってのほかだし、何よりも、セルティとかドタチンからそういう連絡が入ってくるからたまったもんじゃない。有り難迷惑にも程がある。


「牧師さんって結婚出来るんだって」

「ああそう」

「でも親父さんは結婚出来ないんだって」

「へえ」

「これってずるくない?」

「そうだね」


あからさまに機嫌が悪くなった。俺はパソコンに向きっぱなしで名前は後ろから抱きついているからうっすらとパソコンの画面に名前の顔が映っている。例え名前の顔が見えなくたってわかる。俺が空返事しかしないからだ。


「同じ神さまに仕える人なのに、酷いと思わない?」

「俺には関係ない」


牧師が結婚しようがしなかろうが親父が結婚しようがしなかろうが俺にとってはどうでもいいことだ。もっと不機嫌になるかと思っていたのに何故か俺にまわす腕に力を込める名前。ああ、悪い予感しかしない。


「じゃあさ、予言者は結婚出来たのかな?どう思う?」


関係ないだなんて言わせない、そんな眼光の鋭さを持ち、名前は言った。ふざけるな。俺は予言者じゃなくて情報屋だ。


「イザヤさんは結婚出来たんですかね?臨也さん?」

「知るか」

「あれー?臨也さんって情報屋じゃなかったですっけ?」

「じゃあ、はい」

「まさか金払えとか、」

「そのまさかだよ、名前。俺は情報屋だ。俺の持っている情報を無利益なのに流すわけないじゃないか。例え特別な人であっても、ね」

「今の言葉、プロポーズと受け取りました。ぶっちゃけ昔の人とか興味ないです。結婚しましょう臨也さん」

ほうら、言わんこっちゃない。



真夜中の瞳
(そんなアイツに甘い俺)





□□□□
そんな話を聞いたので。勿論他意はありません。この話ずっと書きたかった。

110702

ご指摘いただいたので修正しました。ありがとうございました!

111217

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