※世界の端っこの続き
何事にも有効期限はあるらしい。今日も1つの有効期限が切れた。そろそろ纏わりつくの止めてくれないかなって言われたんだよね,秋人に。あ,もう高木って呼んだ方が良いのかしら。
「ねえ早くしてよ」
「まあまあ」
そんな訳だから,そのまま仕事場にいるのもなんか違う気がして,真城を連れ出してきたって訳。途中コンビニに寄って今は近くの公園。真城は仕事しなきゃいけないから当然わたしを急かす。時間無くて,忙しいのもわかってる。けど,少しくらい良いじゃない。根詰めすぎると駄目だよ。
好きなことして稼いでるなんて良いよねえ,羨ましい。博打打ちだなんて言うけど,連載持ってるんだから上等よ。そう言えば,わたしみんなに暇人って思われてるかもしれないけど,わたしだってちゃんと働いてるんだからね,スタバで。ははん。
「ちょっと。フタ舐めない」
「はーい」
そう返事をしつつ,さっき買ったばかりの安っぽいプリンのフタを舐める。これをしなきゃ始まらないわよね。何が。何かが。
店員さんに貰ったスプーンですくって食べる。つるつると滑ってわたしの胃へ到着。う〜ん,普通。そんなこと考えながら両足をバタつかせる。降り注ぐ日差しがちょっぴり暑い。
「要る?」
「要らない」
折角気を利かせて聞いたのに,あっさり断りやがった。やっぱとろけるプリンみたいなもう少し美味しい奴にすれば良かったかな。
わたしは,わたしと奥さんを並べて考えたことはない。というか,並べるのは少し違うと言うか,そもそもそういう対象ではないと言うか。いや,わたしの方が愛されてるだとかそんな自過剰なことじゃないのよ。まあ,わたしが1人でどうこう考えたところで,高木の中ではそんなことないんでしょうけど。
奥さん…もう面倒だから香耶ちゃんで良いね,面識あるし。香耶ちゃんって凄く良い奥さんだと思うんだ。明るくて,笑顔が素敵で,亜城木の夢の為なら何でもするし,料理の腕は知らないけど,不味いなんて聞いたことが無いからきっと美味しいんだろう。ほら,完璧じゃないか。こんな素敵な人と結婚出来たんだもの,幸せ者ね,高木は。
「そろそろ帰ろうかな」
久しぶりに彼のところに遊びに行こうかしら。どうせあの人も浮気してるんだろうし会いに行かなくたって良いけど,なんか落ち着くのよね。
「付き合ってくれてありがとう。これ,お礼ね。今までありがとう!高木にも宜しくね!」
手の平に三百円を落とす。これで美味しいプリンでも買えば良いよ。もうあの仕事場に行くことがないと思うと,寂しいけれど。
「ねえ」
「んー?」
一方的に先に帰ろうと足を出した矢先,呼び止められた。何突っ立ってるの。仕事あるんでしょ?早く戻りたかったんじゃないの?良いよ,もう。帰って。
「僕にしない?」
これだ。これがあるか止められないのだ。
有効期限
さあて,次いつでしょうか?
「落としてみればっ?」
「調子乗んな」
「うぃーす」
□□□□
はい。こんな酷い話がある筈ありませんね。でも個人的には楽しかった(おい)
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