「あ・き・と!」

 わたしと高木秋人との関係は,一言で言うと浮気者同士である。それ以上でもそれ以下でもない。
 このことを知っているのは,わたしとそれから亜城木の計三人。もしかしたらアシスタントさんで気付いている人もいるかもしれないけど,わたしは基本的にアシスタントさんが来ない日に此処に来ているから,その可能性は結構低い。

「ねえねえ秋人,構ってよ」
「今これやってるから後でな」
「えー,暇あー」

 こうやって真剣な表情で話を考えている彼が好き。今は構ってくれないけれど,時間を作ってちゃんとわたしを大事にしてくれているところが好き。夢のある職業についてるところが好き。彼の全てが好き。

「秋人!秋人!秋人!」
「うるさい名前」
「はいそこイチャイチャしない」

 ちょっと厳しい相方さんも,何故かわたしと秋人については何も言ってくることはなく,この空間馴染んできたとか勝手に思っている。

「彼女さんと会えないからって八つ当たりしないで下さいー」
「追い出すよ?」
「嫌だなあ嘘に決まってるじゃないですか真城さん!」

 わたしと秋人が初めて会ったのは,大学の時である。凄い適当に大学選びをしてしまったけれど,秋人を見た時には「昔の自分GJ 」と思った。だってその時のいい加減なわたしがいなかったら秋人とは出会えなかったんだから。
 かと言って,ロマンティックな出会いだった訳でもなく。何となく良いなと思っていたら好きになっていたのだ。意外と一途でしょ,わたしって。

"ガチャガチャ"

「あ,」
「来たみたいだね」

 言われなくてもわかってる,なんて心の中でこぼしつつ,真城さんの机の下に潜る。此処はわたしの定位置で,部外者からは全くもって気付かれない素敵な場所なのだ。秋人は真ん中のテーブルでやってるから潜る訳にもいかないし,壁に面している机の下じゃすぐにバレてしまう。

「順調〜?」
「それなりに」
「そっか。珈琲いれるね!」

 足音がキッチンの奥に消えたのを確認して,大きく息を吐く。

 そして。奥さんに見つからないように息を潜める,このスリル感が堪らなく好きだ。




 
世界の端っこ
わたしが良けりゃ良いじゃない



□□□□
短いですねー。だがしかし続きます。

110528

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