あー何でわたしがこんなことしなきゃいけないの!心の中でこぼす愚痴に答える者は誰もいない。
 鈴木君は掃除のサボリ魔、小林君は掃除を毎日押し付けてきて、山田さんは日誌を。わたしはみんなの良い道具じゃないんだけど、内心そう思いながら頼まれたら断れないこの性格を何度恨んだことか。担任教師といえば「いつもありがとね〜」と言って、この問題を解決しようなんざこれっぽっちも思っちゃいない。教師がこんなんだから生徒も生徒なのよ。
 わたしが仕事をこなす間、最初の内は友達が待ってくれたり手伝ってくれたりしたものの、毎日ともなると付き合ってくれる子は次第に減って、わたしの周りにいた子たちもいなくなった。まるで、それがさも当たり前のことかのように。これは新手のイジメなのかなあと思い始めた今日この頃。一人での帰り道に疑問を持たなくなっていた。


「!……」


 こんなところで寝るか?普通。すっかり空が紅く染まった頃、校門を過ぎようとすれば、門に寄りかかって寝る幼なじみの姿があった。


「ねーえーこんなところで寝てたら風邪ひくよ〜起きて〜」

「んっ……名前来るの遅、帰るぞ」

「ちょっと、寝てたの誰だと思って…!」


 わたしが来るの遅いだなんて、わたしを待ってくれていたの?その言葉にわたしは期待してもいいのかな、
 例えわたしが使いっパシリでも、貴方には本当のわたしを見てほしい。みんなの陰に隠れてしまっているけれど、貴方だけにはわたしを知っていてほしい。そんなのわたしの我が儘かな。

 じわり、視界が歪む。どうして涙が出てくるの、泣く予定なんかじゃ、全く…


「泣くなよ」


 幼なじみである彼は、恥ずかしいけれど、泣いてるわたしを沢山見てきた。レンはわたしが泣いてる時に、「泣くなよ」と「泣きたい時は泣け」を使い分ける。今泣くなよと言ったのは、きっとわたしが泣きたい訳じゃないことを見透かしてるからなんだと思う。そうならわたしは涙を止めなきゃ。心ではそう思うのに、後から後からこぼれだす。


「!」


 無言で握られた左手に、懐かしさを覚えた。そういえば昔はよくこうして手を繋いで歩いたものだ。


「名前っていつも、手繋ぐと泣き止むんだ」

「…そうかも」

「だろ?」


 流石俺、なんておどけてみせて、トゲトゲしい雰囲気を柔らかくしようとしてくれるのがわかる。気をつかわせてしまってごめんなさい。

 最後に。最後に一粒だけレンに見えないように涙を零した。この想いは一番近い彼にどうしても伝えることが出来ない。


  かみさま、
  この声が聞こえますか





□□□□
久しぶりにレンくんにたぎってしまって。意外と短時間で書けた。って言っても45分くらいかかっているのだが。
うちのサイトショタレンばっかな気がして(そもそもあんまり書かないけれど)こういうちょっとイケてるレンは新鮮でした。
どうでもいい補足::ヒロインとレンはお隣さん同士。クラスは別。

110515

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