「やっぱり此処にいた」

「来ると思ってたよ」


 今日は臨也の誕生日だから今頃部屋は信者の子たちで溢れかえっているんだろう。まあ、主役は不在なのだが。
 自宅にいない時、臨也がよくいる漫喫に行ってみれば、案の定パソコン持ち込んでお仕事の真っ最中だった。


「ねえケーキ無いの?」

「無いよ?」

「何で?」

「家に帰ればドアの前に沢山置いてあるでしょうに。わたしも食べるの手伝ってあげるー」


 臨也の隣に体育座りして、作業をじっと見てたらわかりきった質問をしてきた。人間みたいだよ。最後には「太るよ」とか言われたし。どうせ1人じゃ食べきれないんだから素直になればいいのに。


「名前のケーキ食べたかったのになあ」

「人間臭いこと言うんだね。どうしちゃったの?」

「いや俺人間だし」

「変態の間違いでしょ」

「名前は俺に容赦ないなあ。あの時俺の一番興味ある奴じゃなかったら今頃死んでるよ」

「今でも殺す?」

「どうかな」


 一度もパソコンから目を離すことなく言葉を紡ぐ臨也。仕事が忙しいんだか趣味に没頭してんのか…なんか仕草までもがウザくなってきた。こんな奴にひっついてるわたしも結構変な奴かもしれない。今更だな。


「…」

「なんか喋ってよ」

「何で?」

「沈黙が重い」

「また人間らしい…」

「お前本当ふざけんなよ?」

「沈黙が重いだなんてそんなこと思ってるのは臨也だけだと思うけど」

「…」

「今日臨也の誕生日じゃん?だからわたし色々考えてみたんだよ」

「それで?」

「今日は普通の日にするの」

「…嫌がらせか」

「ご名答」

「いい加減にしろ」


 あ、やっと目を見てくれた。ちょっと寂しかったんだよね、わたし。決してパソコンに嫉妬したとかそんなんじゃないから。
 んーでもちょっとわたしの体が危ないかもしれない。臨也が若干わたしに乗りかかってナイフを首に当てている。ナイフは怖くないけど、首は…嫌だなあ。


「え、ちょっと」


 ナイフに手を掛けても渡す気はないようで力が籠もっているのがわかる。仕方ないから臨也の手の上に重ねて反対の手の平へ持っていく。少し力を加えるだけで、簡単に血が染み出して。こういうの見ると液体ってよりも赤血球の集まりなんだなあって思うの。ていうか、顔歪んだの絶対見られた。ウザい。どんだけ切れやすいナイフ持ってんのコイツ。自販機投げ飛ばすような人と遊んでんだもんなあ、当たり前といえば当たり前か。


「ヤンデレじゃないんだからさ、こういうことしないでくれるかな。めんどくさい」

「じゃあヤンデレになる」

「そうじゃないでしょ」

「あーあ、普通の日じゃなくなっちゃった」


 怒る気も失せたのか、私の血のついたナイフを片づけ始めた。ずっと拭いていて、わたしの体を心配してくれるかな、という淡い期待も砕け散った。いつもの癖だし、溢れ出た血を舐めて鞄から絆創膏を取り出して…


「本当、分かりやすいよね名前って」

「悪かったわね」

「いきなり予想外なことするから見ててあきないけどね」


 …どうやらバレていたようです。臨也の癖に生意気な。恥ずかしいじゃんか。その時に傷ついた手を引っ張られたからバランスを崩してちょっと凄い状態になっている。まあ、簡単に言うと臨也の顔が近いのです。こんなわたしでも、臨也が好きだから臨也のところにいる訳だし、無駄に顔が良いから必然的に照れるよね、わたしが。わたしが耳まで真っ赤なのも、至近距離だから見られてる。何コレ、嫌がらせ?いやでも嬉しいかも。わたし変態みたい。


「いつまでも舐めてるの?」

「俺が満足するまでかなあ」

「ぎゅーがいいぎゅーが」

「俺このまま名前食べたいくらいなんだけど」

「やだ」

「名前って結構ウザいよね」

「臨也には負けるよ」


赤々とひかる
黒々としずむ


「ケーキ多すぎ…」
「ほら言ったでしょ」




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この忙しい時に誕生日とかふざけんなよ!好きだから書いたとかそういう訳じゃないんだからな!

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