「何作ってんの?」

「うわっ!げ、原稿は?」

「まだ。ちょっと息抜きしようと思って」

「お疲れ様。コーヒー?」

「うん」


 キッチン使用許可わとってからずっと籠もっていたから心配して来てくれたのかな、とか都合の良い解釈をしながらボウルを冷蔵庫にしまった。そんでもってマグカップやらを取り出した。コーヒーが出来るまで此処にいるつもりなのか、椅子に座って待っている。参ったなあ。


「良い匂いするね。ケーキ?」

「バレちゃったか…。出来上がるまで秘密にしときたかったのに」

「なら家で作れば良かったじゃん?」

「まぁ、ね」


 家だと親に何か言われそうで嫌なんだよねぇ、という言葉を飲み込んで苦笑いをする。家で作ったら多分兄弟にはからかわれるし、父にバレたら…まぁ友達にあげる奴って言えばまだ良いだろうけど。そもそも仕事場に着ていることだって行ってないからそんな訳わからんとこ行くな!なんて言われたら元も子もないし。頑固親父だからなぁ…。


「はい、コーヒー」

「ありがとう」

「作ったら持ってくから残りも頑張って!」

「一番良いのを頼む」

「大丈夫だ、問題無い」


 わたしがぴっと親指を立てて返事をすると、サイコーはマグを持って向こうの部屋に消えていった。あの笑顔、なんであんなに可愛いんだろう。癒されるなあ。──とかなんとかって本人に言ったら怒られるかな、怒られるだろうな。男の人は可愛いって言われても嬉しくないって言うもんね、寧ろ嫌、みたいな。わたしとしてはカッコいいって言われても十分嬉しいけど。


*****


「それじゃあ失礼しまーす。明日は15時で良いですか?」

「はい」

「あ、お疲れ様です!」


 ぞろぞろと帰っていくアシさんに挨拶をして見送った。さて、残るはシュージンとサイコーの2人のみだし、まあいっか。

“パチンッ”

「ん!?停電!?」

「まさか。今消す音聞こえたし、名前だろ」

「大正解〜、流石サイコー!」

「で、何で蝋燭?仕事出来ないじゃん」

「まあまあいいから。ちょっと此処に蝋燭置かせてね」

「あ、ちょっと。何処行くんだよ?」

「…」

「…」

「…」

「あれ?名前?」

「おーい」

「……ハッピバースデートゥーユー、ハッピバースデートゥーユー」

「「ハッピバースデーディアサイコー ハッピバースデートゥーユー」」

「そっか…僕今日誕生日か。2月18日だもんな」

「そうだよ、気づかなかったの?」

「うん。何でいきなりケーキ作ってるんだろうって思ってた」

「自分の誕生日気づかないってそれ、大丈夫なの…?」

「まぁいいんじゃね?漫画描ければ!」

「シュージンのキャラ…」

「え?俺なんか変だった?」

「いや…ってかさっきはのってくれてありがとね!歌!」

「まぁな!これくらいは任せとけ!…にしてもこのケーキ、美味そうだな」

「シュージンにはあげねーからな」

「え!?ケチだなサイコー!まぁいいや、俺ん時は見吉に作ってもらおー」

「わたしも作ろうか?」

「ダメ、絶対。そんなの許さない」

「…だそうですシュージンさん」

「ケチいなー。ケーキも食えないし、仕事も出来ないんじゃ帰るわ」

「じゃあシュージン明日な」

「夜は足元に気をつけてね!」

「夜はって…。じゃあ昼は何に気をつけんの?」

「考えてなかった……」

「はは、苗字らしいわ。じゃあなー」

「ばいばーい」

「気をつけて帰れよー」

“パタン”

「…」

「…」

「急に静かになったね」

「うん。いつも忙しくてアレだけど、こう、蝋燭の光とか、落ち着く」

「ね、なんかあったかい感じ」


 いつも時間に追われるようにして過ごしてるサイコーに、少しでもゆっくりしてもらおうと思って。一年に一度なんだし、この大切な日くらい、落ち着いた時間を過ごしたって良いと思うから。


「誕生日おめでとう。生まれてきてくれて、ありがとう」

「いつも側にいてくれてありがとう」

 いや、わたしはサイコーの側にいたいからいるんだよ。お礼を言われる程じゃないの。それと、ありきたりな言葉でしか祝うことが出来なくてごめんね。
 ふっとサイコーが蝋燭に息を吹きかけたから必然的に灯りがなくなって真っ暗になった。暗闇の中でサイコーの手を探して、少し触れた先からわたしの手のひらを握り返してくれた。そんなことが、訳も無く嬉しくて。わたしはやっぱり貴方が好きなんだって、どうしようもなく愛しいって、思った。
 時計の針の音が響くその部屋に、小さなリップ音だけが残った。




□□□□

気がついたら会話だらけになってしまった
てかシュージンの口調がわからない件について。うわあああ
とりあえずおめでとうございます\(^0^)/

110218

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