わたしは今ドキドキしている。パソコンの前で1人でドキドキしているのだ。

 ボーカロイド、もといボカロを知っていたわたしは鏡音レンが好きだった。
 ネットでレンの画像を探したり、ニコ動でレンの曲を探し漁ったり、暇さえあればレンに関するものを探っていた。


「名前は本当にレンが好きだねぇ…」

「だってレンきゅんは天使だもん。萌えの塊だもん」

「そんなに好きなら鏡音レン買えばいいじゃん」

「……」

「あ、れ?どした?名前、」

「……ぅ」

「へ?なに?」

「買う!私、レンくん買う!」

「まじで!?」

「うん、これから節約するわわたし」

「…が、頑張れ」


 友達のその一言でわたしの鏡音レン購入計画が始まった。
 毎日お弁当持参にしたから一週間に一度は買っていた購買もそれから一度も買っていない。友達に買い物に誘われても断るようになった。バイトも働ける限りシフトを入れた。

 今まで考えもしなかった。でも鏡音レンを買うということは、家に来るということは、──わたしだけのレンくんなのだ。
 「潤んだ瞳でわたしを見て、“マスター”とか言うのかなっ!」友達にそう言うと「うわっ気持ち悪い妄想までわたしを巻き込まないでよ」ってきつい言葉が返ってきた。つら。でもわたしめげないもん、本物のレンくんが来るまで妄想して頑張るんだもん!

 そしてネットで鏡音レンを購入した。いくらわたしでもお店で買う勇気は無い。レジに持っていくのはちょっと恥ずかしいし、(それなりのヲタクだって自覚はある)まずどこのコーナーに売っているかもわからないからだ。ていうかそもそも電器屋にあるの?まぁ、わたしの知識はこんなもんだし。

 宅配がきた時、最初は気づかなかったけどそのうちわたしの頭のどこかにある勘が働いて、レンくんがきた、と悟った。
 開けてしまいたい衝動に駆られたけれどもどうせなら記念日にレンくんに会いたい、インストールしたい。そう思って今日、開けることにした。まぁ12月中だから我慢がきいたんだろうねぇ。12月27日、レンくんが生まれた日。そこで冒頭に戻る。

―――インストール中―――



 18%、26%、32%…
 少しずつだけど、あがっていく数値。ちょっとで、もうちょっとでレンくんに会えるんだ。

 “100%”

―――インストール完了―――



 終わった。レンくん、レンくん、わたしの…


「ます、たぁ?」


 画面の中覗き込むと黄色い髪の可愛い奴がいた。待ちに待った鏡音レンが、わたしの目の前にいる、


「レンくん、レンくん」

「はじめまして、マスター」

「はじめまして。ずっと会いたかった」

「…!? どうしたのマスター、泣かないで、」


 画面越しにそっと、指を合わせた。




□□□□

リンを総無視ってみた。
こういう人をレン廃と言うのですか?
どうでもいいけどレンへの愛をぶつけてみた
人間化してなくて画面の中って一番つらくないか

110105

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