※現パロ



















「勝手に来るなって言ったろ」

「いいじゃない別に。それにローこそ、電気点けなきゃ目悪くなるよ」


 パチン。蛍光灯が点いた。ローは何をするでもなく窓の外を眺めていたようで、只只座椅子に座ってぼうっとしていた。外はもう暗くなりかけている。


「ご飯は?食べた?」

「食った」


 見れば、カップラーメンの空がテーブルに乗っていた。全く、普段こんなものばっかり食べて。何の為にわたしが来ていると思ってるの。そりゃ美味しくはないかもしれないけど食べれる程度には作ってるつもりだし、カップラーメンだけの生活より幾らかましでしょうに。


「明日も来るからご飯食べずに待っててよ、絶対だよ」

「俺に指図するな」


 なんて生意気な奴だろう。自分はニートの癖に、人にご飯作らせたりしといてこんなことを言うのか。自分は頼んでないとか言いそうだけど、そんなことは関係ない。
 どうせ小遣いなんてその辺の女引っかけて巻き上げてるんでしょうけど。そんなことも知ったこっちゃない。じゃあ何でわたしがこんな生意気ナルシストの為にこんなことしてるのかって?それすらもわからない。本当、何でだろうね?


「あ、ちょっと」

「んだよ」

「髪伸びたんじゃない?」

「知るか」

「伸びたよ伸びた、ほら!」


 頭の帽子を勝手に取って勝手に被って鏡の前に立たせる。嫌そうな雰囲気丸出し、まるでなってない。でも髪が伸びたのは事実なのだ。家の中で帽子被ってると禿げるとか言うけど、あれは嘘だったんだろうか。


「切ってあげようか!」

「そんな目を爛々と輝かせてもやらせないからな」

「もう三年目なんだからいいじゃんー」

「駄目だ」

「ほらほら、こっち座って!」


 嫌がるローをダイニングテーブルに腰掛けさせる。ローは背が高いから軽く腰掛けるにはダイニングテーブルが丁度良い。ま、切るのが大変になるけど、珍しく今日はそんなに反抗的じゃないからここは負けてやろう。コンパクトな鞄から商売道具を取り出す。こんなときの為にエプロンも持ってきておいて良かった。


「はーい、じゃあ切りますねー」

「……」

「変な切り方されたくなかったらせめて真っ直ぐ座っててね」


 不貞腐れているローの黒い髪をダイニングテーブルに乗ってカットしていく。こんな風に切るの、久しぶりだな。昔はお金も無いからよくローで練習させてもらったものだ。それが、就職してからはめっきりやらせてもらえなくなったのだけれど。今思えばあれは奇跡のような気もするし、勿論今も。

 シャキシャキと軽快なリズムで。いつものように。真っ黒い癖毛がフローリングに散らばる。どうせ部屋の掃除をするのもわたしなんだから関係ない。終わったらすぐ掃除機だな、なんて考える。


「いつもと同じでいいよね」


 ローは新しい髪型にしたりすることはあんまりない。というか、わたしの知る限り一度も無い。最初はもっと遊べばいいのにと思っていたけど、ここまでくるともうそれ以外の髪型にするのが怖くなってくる。勿論、そんな風に思うのはローだけだから、お客さんには注文通りカットするけれど。


「どう?」

「…風呂入ってくる」


 犬みたいにぶるぶると頭を振って、髪の毛を落としながら風呂場へ向かっていった。あーあ、そんなに散らかして。もっとこっちのことも考えてくれてもいいのに。とまぁ、やり始めたのは自分だからそんなこと言えないか。鋏を簡単に手入れして、掃除機を出した。吸引力の変わらない、只1つの掃除機。


*****


「やっぱり良いじゃん!さっぱりして!」


 ローが出てくる前に全て吸ってしまわないと折角綺麗になったローが汚れてしまう、と出来るだけ早く片づけた。結果、お茶を飲むくらいの時間は出来た。


「今日泊まってっていい?明日も出勤だからさ」

「ああ」


 ローのマンションからわたしの職場はとても近い。自宅からだと寝坊すると絶対遅刻してしまうようなギリギリの生活なのだが、此処からだと朝も少しゆっくりできる。だから、疲労が溜まっている時とかに利用させてもらう。わたしの布団があるくらいだ。


「じゃあお風呂借りるね」

「待て」


 嗚呼、やばい。ローの瞳に色が見える。何で盛ってるのよ、こいつ。嫌だよ、わたし。
 わたしに少しずつ近づいて、途中で電気を消した。


「何考えてるの?わたし相手に」

「何でもいいだろ」


 良い訳ない。何も。今までこんなことなかったのに、何で、急に。


「せめてシャワー浴びさせて」

「じゃあ俺も入る」

「は?」

「お前の裸が見たい」


 …はい?
 わたし、ローがこんな変態だなんて知らなかったぞ。何、どうしちゃったの本当。そういう一時の気の迷いからって良くないから。


「とにかく駄目」


 風呂場に駆け込んで鍵をかけた。まさか鍵を壊して入ってくるなんてことはないだろうがずっと外で待っていたらどうしようなどと考えながら、そんなものを全て流すかのように熱いシャワーを浴びた。




無口な言葉

□□□□
どうしてワンピースの現パロは暗い部屋メインで話が進んでいくんだろうと自分でもよくわからない碧子です。なんだかんだ、お前が悪いとか言って、大した説明もせずにそのままずるずると流されていっちゃうんじゃないかしら。で、夢主もコイツの抱き方を知りたいだけだと自分に言い聞かせて。次の日失敗しそうだなオイ大丈夫か

121013

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -