「ちょい待ち」

「離してよ!」


 掴まれた右手を振り払おうとしても、男女の差は歴然で無意味なものになってしまった。それにしても本当に離してくれないかな、あと数分でバラエティ番組始まるんだけど、やばいやばい。


「何処行くんや」

「リビングに決まってるでしょうが!」

「ちゃんと髪乾かさなあかんやろ」

「真子がお風呂入ってる間自然乾燥させとくからオッケー大丈夫!」

「大丈夫やないやろ、乾かしたるからこっち来ぃ」

「いやーしゃべくり観るのー!!」


 抵抗しようにもできなくて、ずるずると脱衣所に逆戻り。しゃべくり録画さえしてないんだけど、ねえ、どうしてくれんの、これでようつべにも無かったら恨んでやるからな!


「何で真子はそんなに髪の毛ストレートなのよ!全く!」

「あ、ちょ、それあかん!」


 真子の直毛に苛ついて、頭を掻き回したら怒られた。髪全ッ然傷んでないし(こんな綺麗な金髪なのに!可笑しいでしょ!)、おかっぱは似合っちゃってるし、もう何なのこいつ!
 あ、地味にドライヤー出して乾かし始めた。真子の細くて骨ばった綺麗な指が、わたしの黒い髪の毛に通っていく。


「あたしも髪切ろっかなー」

「何でや」

「お揃いの髪型。どうよ?」

「名前におかっぱは百年はえーよ」

「何それシャレんなんない」

「それに俺以上におかっぱ似合う奴おらへんもん」


 うわーナルシ、とか思ったけど事実だから口には出さない。くそっ、なんか負けた気分だ。何で!?


「名前はロングが似合うからそんままにしとけ」

「……何それ。不意打ちとか卑怯なんですけど」


 嬉しい気持ちってなかなか隠せないもんで、目の前にある鏡がわたしの赤い顔をそっくりそのまま映している。


「なんや、嬉しいんか。素直になったらええのに」

「別に。ドライヤー熱いだけだし」

「そ。ほんならもっとやったるわ」

「っあちちち!ちょっと、手加減してよ!」


 鏡越しの真子の顔は、してやったりなニタリ顔で、こいつはもうどうしようもないなって感じ。これでわたしが火傷したらどうすんだか。ま、怪我したら怪我したで世話するのこいつだし、自業自得にさせるからいいけど。いや、良くはないか。火傷って跡残っちゃうし。


「真子って結構乾かすのうまいよね」

「昔髪長かったやからな」


 そんなこと言われたら、その時どうして一緒にいれなかったんだって、今となっては意味のないことを考えてしまうじゃない。


「真子のバカ」

「あ?何か言うた?」

「何でもなーいー!」




□□□□
いざ書くとなると大阪弁むずいやんな

120630

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