「緒方さん…」
「どうかしたか?」
「どうもしてません。ただ、」
「ただ?」
「……すみません、何でもないです」
こんな時に限って緒方さんを頼ろうとするなんて、まるで駄目だ、わたし。でも怖いんだ、明日の戦いが。いつもと何ら変わりのない筈なのに、怖いの。こんなこと言ったら叱られてしまうのに、何してるんだろうね。
「何かあったんだろ、言え」
「何もないです」
「嘘つけ」
「ついてません」
「じゃあ顔上げて俺の顔を見てみろ」
そんなことしたら、絶対泣いちゃう。でも、何もないと言っている手前、顔を上げない訳にもいけなくて、緒方さんの目を見たら案の定涙が溢れた。
「我慢なんてするな」
「…貴方が悪いんですからね」
そう言ってわたしは、彼の胸に顔をうずめた。わたしの少量の涙が、隊服を濡らしていく。わたしは只の一隊員なのに、こんな風に胸を貸してくれる緒方さん、かっこよすぎだよ。そのうち、緒方さんの大きな掌が頭の上に乗って、さらに泣きたくなった。
「緒方さん、」
「ん」
「明日、無事でいてくださいね」
こんな職種だから、簡単に怪我するななんて言えない。だからせめて、無事でいて。安全に帰ってきて。わたしも貴方と一緒に戦うから。
「お前も、でしゃばりすぎるなよ。傷なんて作ったら嫁にいけなくなるぞ」
「別に、いいですもん」
わたしは緒方さんの背中を見てるだけで。傷ができたって図書隊員ならきっとわかってくれるし、結婚したって此処をやめるつもりはない。笠原みたいにここにいるつもりだ。まぁ、結婚したらの話だけど。
「絶対、無事でいて。約束して下さい」
「何だよ、いきなり。今日変じゃないか?」
「真剣に答えて下さい!」
「…俺は、玄田隊長のムチャについて行かなきゃならん。だから保証はできない」
「……」
緒方さんのことだから、そんな答えがくるなんてわかってたのに。何してるの、わたし。態々それを突きつけてもらいにきたの。いや、寧ろその方がよかったかもしれない。
「でも、善処する。これでいいか?」
彼の隊服をぎゅっと掴んで、返事はしなかった。ずっとこうしていたい。ああ、緒方さん。お願いだから、無事で帰ってきて下さいね。
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映画観てきました。堂上は普通にかっこよくて、帰ってきたら緒方さんにたぎってた。彼の包容力はんぱない
120624