「翔陽ー!」


 名前さんが息を切らしながら駆けてくる。両手に大量のポカリを抱えて。名前さんは男子バレー部のマネージャーだから休憩までに買い出ししてきてくれたのだ。


「ポ、ポカリ…くれ!」

「はいどうぞー」

「おっこれ俺もらおー何か付いてる」

「あっちょっそれは駄目っ!」


 腕の中からはどんどんペットボトルが抜き取られていく。わらわらと男に囲まれている名前さんを見るのは複雑な気持ちになるけどしょーがない。名前さんは俺より先にここにいるんだから、俺がそのことに関しては何も言えない、と思う。


「それ、翔陽のだから!」

「えっ」

「はい翔陽これどうぞ」

「あ、ありがとう、ございます」


 みんなの視線が俺に刺さる。こんなことで真っ赤になる俺、駄目だな、恥ずかしい…。名前さんから渡されたペットボトルには、キャップのところに「翔陽」と書かれたかわいいタグがついていた。


「一年の癖にナマイキなんだよっ!」

「ええっ!?それとこれとは関係ないんじゃ…」

「あ゛ぁ!?」

「ひいいいい…」

「じゃあ田中、あんたと付き合ってあげよっか」

「は!?」

「ちょっと名前さん!?」

「翔陽の次だから2番目になるけど」

「コイツの下なんか死んでも嫌だ!」

「知ってる」


 にこやかな顔で笑う名前さんを田中先輩がど突こうとする。が、失敗に終わった。名前さんがひらりとかわしたからだ。それにしても、一応年下と言っても彼氏の前で浮気しようとするなんて…どうなんですか、名前さん。


「おいお前等、練習再開するぞー」

「「「うーす」」」

「あ、翔陽待って」


 名前さんに呼び止められて振り返ると、名前さんの唇と俺のとが重なった。やわらかい。あー、今日2回目の茹でダコだ、かっこわる、


「じゃ、練習頑張ってね」


 練習中盗み見た名前さんは、潔子さんに「練習中そういうことしないで」と怒られていたけど、気にしてる様子はなかった。

 あ、

 気付くの遅いかな、タグの裏に書いてあった言葉にまた嬉しくなった。




□□□□
本当は影山推しなのに最近日向くんのこと考えすぎて脳内日向一色。年上彼女も可愛いと思ったんですがどうですか。遅れましたが、お誕生日おめでとうございました。

120622

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