今日は5月の4日。臨也の誕生日。近くのケーキ屋で小さいケーキを2つ(勿論わたしも食べたいからだけど)買ってきた。見栄えこそ誕生日ケーキらしくはないけれど、同じ日に2つの味が楽しめて一石二鳥!なんて使い慣れていない四字熟語を使ってみる。ま、臨也がわたしに少しでもくれなかったらこの計画はパーなんだけど。
 臨也のマンションの前で座っていること数十分。インターホンを押しても誰も出てこないし、電話を掛けても電源が切られている。待っていれば帰ってくるかな、なんて思って待っているけど、帰ってくる気配すらない。今までに家に来て外出中なんてことは一度も無かったからどうしたらいいかわからないし。早く帰ってきてくれないと折角買ってきたケーキのクリームが溶けちゃうなぁ。こうやって臨也の帰りを待っていることなんかは彼は知っていて、何処かでわたしを笑っているんだろう。
 そもそも、臨也の誕生日すら本人から聞いてないのだ。「いつだろうー?」で終わってしまった。仕方なく波江さんに聞いても「そんなの私が知る筈ないじゃない」わたしが此処にくる前からいたから知ってると思ったんだけどなぁ。最終的に教えてくれたのはあまり面識の無い岸谷さん。聞いたらさらっと教えてくれた。臨也の友達が1人でもいて良かったって、この時思った。
 臨也、お願いだから早く帰ってきて。いい加減足が痺れた。


「はーいお疲れ様ー。中入って良いよ」

「……え」

「入るの?入んないの?」

「は、入る」


 まさか居留守してたなんて。この人最悪だ。仮にも彼女が自分の誕生日を祝う為に家まで来て待ってるっていうのにその状況を楽しんで放っておくなんて。「仕事が忙しくて出れなかったんだよねーごめんねー」なんてわたしの顔も見ずに言う。お前はどれ程大変な仕事を家の中でしていたのか。嫌味ったらしく言う彼はきっとチャットでもしていたのだろう。
 中に入ると波江さんがいて「ごめんなさいね、出たら給料減額とか言うものだから」と言った。何でも臨也の言うことを聞くって訳ではない波江さんだからいないと思っていたけれど、お金の絡む話になるとそうはいかないらしい。


「ケーキ何?モンブランある?」

「モンブラン好きなの?」

「特別って訳じゃないけど、気分」


 ホールケーキじゃないことで意表をつこうと思ったのに、それにも失敗。もう抗うことは諦めた方がいいのかしら。


「モンブラン無い」

「買ってきて」

「やだ」


 そう言ってぎゅっと臨也に抱きついた。またケーキ屋まで行くの面倒臭いし、お金だってかかるし、何より今は臨也から離れたくない。


「今日は積極的なんだ」

「そんな訳じゃ、」

「いや、そんな訳あるね」

「…だって何十分も1人で待ってたんだもん」

「そっか。偉かったね」


 絶対内心では思ってないだろうけどもうそんなことはどうでも良かった。今臨也が此処にいる、そのことに酷く安心して目を閉じた。


「誕生日おめでとう」




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セーラー服の女子希望

120503

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