たまに、この人に本当に食べられてちゃうんじゃねぇかと思う。身体を這う舌も、耳に押しつけられる八重歯も、昔はただ甘いだけだったそれが、今じゃ別の生き物みたいで。歯形が付くようになったのはいつからだったか、みみずが身体を這うようになったのはいつからだったか、今となっては思い出せない。ただ、その傷だらけの俺を見て、
「美しいね」
って言うんだ。まるで絵画か彫刻を見ているかのような顔で言うから、俺も麻痺してたんだ。嗚呼、これが美しいってことかって。この人が俺を美しいと言うなら、美しくしてくれるなら、どうだっていいや。そう思ってた。最初っからいてもいなくても同じみたいな存在の俺が、社会のゴミ屑と言われてた俺が、美しくなれるならって。
でもある時気付いちゃったんだ。ギノさんがさ、色相が濁ってきてるからあいつと付き合うのはやめろって言ったんだ。ギノさんが言うには俺の色相が濁り始めたのはこの人と出会ってから3ヶ月頃だって。付き合って少し経った頃だ。でも俺はそんなの信じたくなかった。だってこの人は俺を美しくしてくれるんだから。必要とされなかった俺が、この人にだけは必要としてもらえるって思ったんだから。カッとなってギノさんに掴みかかったよ。そのとき見られたんだよな、腕の痣と引っ掻き傷を。それでまた言うんだ。あいつは可笑しい、別れろって。でも俺はギノさんにだってこの人を渡したくないとかお門違いなこと考えて、忠告を気にも留めずにこの人の胸で寝たんだ。
「美しいね」
今日もこの人は言う。俺たちはもう戻れないところまで来ちゃったんだよ。「何のこと?」美しい顔が微笑んで、また、真っ暗に、なった。




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サイコパス楽しみでなりません。新編集版?てわかってはいるけど。夏も秋も冬の映画も。もう秀星は出てこないけどさ。

140704

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