※アレな描写入ってますので注意してください
「名前……」
「どうしたの飛雄」
もう夜遅いからか目がすこしとろんとしていて、少し眠そうな表情だ。顔が近づいてきて、キスをされたところで気付く。
お酒の香り。
テーブルにあった焼酎のグラスに目をやると空になっている。
───やってしまった……。
「飛雄、お酒飲んだ?」
「飲んでねえよ」
「テーブルの上のグラス、飲んだでしょ?」
「ああ」
そんな会話なんてお構いなしとばかりにキスばかりを繰り返す。
これはお酒だから飲んじゃ駄目だよと、何度も念押ししたのに。飛雄は未成年だし、自ら悪いことをするようなタイプじゃないから本当に間違えただけなんだろうけど、それが故に何をしでかすかわからなくて怖い。多分、飛雄のことだから更に本能に忠実になるんじゃないか、とかは思うけど。
飛雄の舌が首筋まで来たところで頭が冴えた。
「待って飛雄、此処どこだかわかってる?」
「居酒屋」
「そう、だから」
「したい」
「駄目だって」
「俺がするっつったら、」
「話聞いて、飛雄っ」
今日は久しぶりに烏野で会おうか、ということになって大地さんや田中など錚々たるメンバーが集まっていた。こんな私でも烏野在学当時はバレー部マネージャーをやっていたから飛雄と一緒に来たのだ。勿論未成年には飲酒しないように言っていたがまさかこんなことになるなんて……。若干押し倒されかかっているし(頑張って手で支えて踏ん張ってるけど割ともう限界)、みんなからのチラチラとした視線が痛いです。田中や西谷はいつものこととして、特に菅原さんの眼光が鋭いです…。
「みんないるし、こんな所じゃできないでしょ」
「見せつければいい」
「わたしが嫌なの!」
「俺はヤじゃねぇし」
「とりあえずもう帰ろう?それでいいでしょ?」
「後で言うこと聞いてもらうからな」
「なにそれ、」
そうと決まれば行動は早い。わたしの腕を取って立ち、大地さんに先に帰りますと言うとさくさく早足で歩いて、公共の場でことに至ろうとする飛雄を死に物狂いで制し、やっとのことで家へ帰ってきた。誰か後でメール入れてきそうだな…あのあとどうなったの?なんて。
「はや、いよ」
「どんだけ待ったと思ってんだ」
ドアが閉まるや否や玄関で服を剥かれて、注がれるディープキス。いつもよりしつこくて、息もできないくらいの深いやつ。苦しい。ちらりと顔を盗み見れば紅潮した頬。ああ、興奮してるんだな、なんて心の中では冷静に見ているわたしは全然かわいくない。キスをしつつ、手は身体を弄って、いつのまにこんな器用になったんだろう、なんて。飛雄は同時に2つをすることなんかできなくて、1つを集中してやる不器用さんだったのに。右手がスカートまで伸びて、無意識に声が出る。
「何で今日、スカートだったんだよ」
「何でって、特に理由は、」
「田中さんとか、見るだろ」
そして指が止まった。田中の名前が出てくるってことは、多分、見られたくなかった訳か。スカートなんて高校時代じゃほぼ毎日履いてたのにな。それに、見るとしたら田中だけじゃなくて、他の人も見てると思うよ、飛雄。
「それに、旭さんやスガさん、大地さんとも仲良く喋ってたし」
要するに嫉妬、したわけね。だからいつもより性急で、がっついてたんだ、なるほど。流石飛雄、単純明解。わたしだって久しぶりにみんなと会えて楽しかったんだもの、そりゃ話も弾むよ。でも、だから、その分飛雄を構うのが疎かになっちゃってたかもしれないね。
「妬いたの?」
「そんなんじゃねぇよ」
「ごめんね」
完全に飛雄と壁に挟まれた状態で、頭を撫でる。少し、寂しかったんだよね、ごめんね。大きな図体をしているけど、中身は昔は変わらないというか、昔から身体は大きかったけれど、いつまで経ってもこの子は子供だなあ、なんて思いながら。
「大丈夫、わたしの一番は、いつでも飛雄だから」
「俺のこと、好きか?」
「好き。大好き」
「俺もだ」
「……っあ!」
いつの間にか出したのかわからないソレを突然突き立てられて、思わず声が漏れてしまう。まあどうせ、声を出すまいと歯を食いしばってもそんなのお構いなしに飛雄は動くのだが。
「うわ、入った……ぐちょぐちょじゃねえか」
「……言わな、で…!」
「期待してたんだろ」
「だから、言うなっ…!」
「よく我慢できたな」
「……違うって、ば」
「睨んでも、煽るだけだっつってんのに」
「ふざけ、ぁあああ!」
もう何も考える余裕なんて残ってなくて、わかるのは飛雄から与えられる快感と切羽詰まった顔の飛雄だけ。なんだ、我慢してたのは飛雄だって同じじゃないか。
*****
「もう、いいでしょ。お風呂入る」
息を調えながら言うと、担がれて運ばれる。向かう先はお風呂だ。飛雄の癖に珍しく気が利いてる。
「ありがと。もう大丈夫だよ」
「何言ってんだ。まだするに決まってんだろ」
「はっ?え、ちょっ、待った!」
「もう待ったは聞かねえから」
もう絶対、飛雄にお酒なんか渡さない、頭の隅でそう思いながら、また、快感の波に溺れる。
140508