※似非京都弁
ヒロインは末の妹
九巻不浄王編の後あたり
「柔兄柔兄っ!」
「おー、帰ってきてたんか。おかえり」
「宝生の蛇と結婚してかてほんまかいな!」
帰ってきてすぐこれや。とりあえず座りぃ言うても、座らへんで興奮しきっとる。名前は丁度友達同士で旅行で東京の方へ行ってたから、不浄王の一件にも関わらずにすんだんや。中学生なんに友達同士で旅行とか危ない言うたけど、「そりゃ柔兄過保護すぎやわ」と金造に言われてしまうたんが少し前の話や。大事な妹の心配をするのは、当たり前と思うけどな。まあ、名前が無事に帰ってきてくれた今、どうでもええことやけどな。
「おう。ほんまや」
「何で!?あたしが一番可愛いて、言うてくれてたやろ!?なのに……!」
「名前でもこれ以上俺の奥さんのこと悪く言うたらあかんで」
「あたしは柔兄と結婚するて!言うてた!先に言うたんはあたしや!」
「なんや、おかえりかい名前」
「うちに蛇がおるううううううううう人の名前勝手に呼び捨てすな!」
最初は優しく声かけとこ思うたんか蝮が出てきて挨拶したけど、名前の態度に触らぬ神に祟りなしゆう顔して台所へ行ってしもうた。あかんなあ、もう家族やのに。
「あたしが知らんうちに和尚が和尚でなくなっとるし!酷い魔障にかかった人はぎょーさんおるし!あたしもうこんがらがってんのや!」
「せやから落ち着けて」
「落ち着いていられへんのや……!あたしの、柔兄に……!」
「そんなん言うたらお父悲しむで」
「お父はもうおっさんやん。あたしは最初から柔兄がよかってん…!」
そういえば、小さい頃にも「大きくなったら柔兄と結婚するのー!」言うて、お父悲しませてたなあ…確か「姉さんたちは普通に俺と結婚するてゆうてくれたんに、名前だけは柔兄、柔兄て…」てほんまに傷付いとった。もっとおやこうこうせなあかんて、名前。なんて言うても、聞く耳を持たんからな。あいつは。
「じゃあ俺は?」
「金兄は黙っとき!チャラチャラしてる奴なんか論外や!」
「おま、それ兄貴に言う言葉とちゃうで!そんな子に育てた覚えはない!」
「金兄に育てられてへんし!でも廉兄よりマシ」
「当たり前やろ!」
「おい!俺不憫すぎるやん!」
「廉兄なんて何で柔兄と兄弟なん、て思うくらいや!柔兄はこない優しいのに…!」
「俺かて優しいやろ」
「欲望に忠実に生きすぎなんよ!」
「名前に言われてもうてるで」
「うっせ!」
金造廉造と顔合わせするといつもこうや。まあ、名前の言うとおり金造も廉造もほんまのアホやから仕方ないけどな。頭ピンクに染めるとか、どうかしてるやろ……。
「柔兄何にやけてんのや」
「違う、お前等のアホさに呆れてたんや」
そこでまた2人がぎゃいぎゃい騒ぐ。どうせ年功序列で敵わへんことくらいわかっとるんやからせめてもう少し静かにしてくれへんかなーとは思う。
「名前、ここ座りぃ」
「……」
「そない怒ることないで」
「柔兄には、わからへんよ」
少し落ち着いてきたんか、静かになって俺の隣に座った。
「俺もそろそろ結婚と思うてたし」
「あと二年もすれば、あたしも結婚できるようになる」
「それに俺がもらわな、蝮なんてもらう相手いぃひんやろ」
「せやけど……」
「何気に失礼なやっちゃなー」
「金兄は黙っといて!」
「へいへい」
「俺よりいい男早く見つけえ。な?」
「……ん」
あんまり納得してへん顔で立ち上がり、名前が向かったんは、………台所かい。蝮に何か言うつもりなんやな。
「蝮姉」
「へっ……!?あてかいな!」
「あんた以外に蝮ゆう名前付く人おるかいな」
「うっ…口が減らんガキやな」
「うっさい!今はあんたと喧嘩しにきたんと違うんや!あたしは青や錦みたいに姉さまなんて呼ばへんからな。上と同じように蝮姉と呼ぶさかい、……柔兄を不幸にしたらあたしが蝮姉を不幸にするからな!覚悟しとき!」
「……肝に命じとくわ」
なんや、そない心配することでもないな。くるりと振り向いてずんずんと歩いてくる名前に微笑むと、泣きそうな顔した名前がいるもんで、兄としての権限で抱きしめてやった。
「そないやから名前はいつまでたっても柔兄離れできないんや」
「バラすぞ廉兄」
「ぞえええええ!?」
「口が悪すぎるで?名前」
「はーい」
語尾にハートマークまで付けてくるんや。こない妹、放っておける訳ないやろ?
140321