『もしもし』
「集?わたし。名前。元気?」
『うん、元気だよ。どうしたの急に。珍しいね』
集が珍しいというのも無理はない。わたしから連絡するなんて、今までに全然なかったから。いつも集やみんなから連絡がきて、わたしはそのメールを見て勝手に把握して勝手にドタキャンする。みんなで集まっているんだろうなあと思いながら、集に返信するのを忘れてしまう。
「珍しい、ていうか、昨日パーティーに行けなかったから、そのお詫び」
『態々僕に言わなくても。昨日は祭の命日だったんだから』
「主催者に言うのは当然でしょ。何言ってるの」
集は祭が亡くなってからずっと、祭の誕生日パーティーと命日のパーティーを催し続けている。それが償いなのか何なのかはさておき、ずっと連絡しないのも何だか悪いなと思い、今日は集に連絡をしてみたのだ。これでも実は心臓が煩く鳴っている。
『で、何かあったの?』
「何も。集の声が久しぶりに聞きたいなあって思っただけ」
『ほんとに?』
「ほんと。別に何も隠してなんかないわよ」
『隠したいならそれでもいいけどさ』
「隠してないって言ってるのに」
『はいはい。それで?』
久しぶりの集の声が何だか優しくて、最近の仕事での話とか、沢山話した。勿論集はずっと聞き手で。
「ごめん、長電話になっちゃった」
『いいよ別に』
「男の人って長電話嫌うじゃない」
『僕は楽しかったけど』
「それなら、いいんだけど」
尻すぼみになってしまった言葉に集が笑った。
「笑わないでよ」
『いや、名前も変わってないと思って安心したよ』
「そう?わたし変わったと思うけど」
『でも変わらないよ。昔と一緒だ』
「口説いてるの?」
『まさか』
「だよね」
一呼吸置いて集は言った。
『また来てくれるよね』
「勿論」
切られた受話器に、ごめんねと呟いた。もともとそのつもりなら、わたしは貴方たちに会わなかったりしないわ。
130623