「菅原ー」
「あ、苗字さん。どうしたの?」
「三者面談の紙、出してないって先生怒ってた」
まただ。また俺は、この人に負かされる。
「あー、ごめん。でも態々こんなとこまで来なくても良かったのに」
「教室にいないから、澤村に聞いたら此処だって」
「大地が……なるほど」
多分、この人は無意識だろう。そして、俺を少しばかり苛つかせるこの人も、同じように無意識なんだろう。
「今部活の連絡事項言いに来てたんだ。ほら、影山」
「うっす」
「本当だ。お久しぶり」
「お久しぶり、です」
前会った時も殆ど同じような状況だった。俺ら一年に連絡事項を言いに来たスガさんを、追いかけるようにしてこの人は来る。初めて来た時は、お久しぶりなんかじゃなく、はじめましてとお互いに交わしたんだ。
動物と同じように、この人は俺を嫌いはしないけど、どう考えても俺は学芸会の通行人Bってところだろう。他の奴らと何ら変わりはしない。もしかしたら、菅原さんは俺を毎回この人に紹介しているから、名字くらいは覚えてくれているかもしれない。
俺がこの人と会えるのは、菅原さんがこうして俺の教室、一年の教室に来る時くらいだ。俺は全然三年の教室なんか行ったことないし、行くような予定も、ない。一度東峰さんを見たいという日向に連れられて来たことがあったが、そのときはまだ、俺はこの人を知らなかった。
一年にあった用が終わると、菅原さんはこの人と一緒に帰って行く。とても楽しそうという訳ではないけれど、羨ましくないと言ったら嘘になる。意味のない会話に嫉妬するのだ。俺も、もっとこの人と話せたら、と。
「影山!」
「…んだよ」
「シワ!取れなくなるぞ!」
「うっせぇ!ほっとけ!」
ほっとけって何だよと言いながらずんずん歩いてくる。俺より全然小さい日向。丁度、苗字さんくらいか…?
「って、何考えてんだ俺!?」
「影山?今日お前変だぞ」
「うっせぇぞ日向ボゲェ!」
□□□□
孝支くんに勝てない飛雄ちゃん。カワユス。
130608