「ほんと、綺麗だよねえ」

「何が」

「名前チャンの肌だよ」


 背中から声がする。嘘ばっかり。わたしは戦闘員で、昔から戦場に出てて、背中はおろか、胸にだって傷がある。つまり傷だらけの身体なのだ。最近は白蘭が戦場に出させてくれないから古傷ばかりだけど。本当は今だって戦場には出たい。勿論、最前線に。過酷であればあるほどやる気だってあがるし、わたしの名もあがる。白蘭という存在が出来てからは、帰ってこなきゃっていう使命感も生まれたし。


「嘘つき」

「嘘は言ってないよ。肌は柔らかいし白いから傷がよく映えてて、綺麗だ」

「……変態」


 背中に受けた傷をそっと指でなぞられる。白蘭も、というか白蘭の方が白いのにこんなことを言ってくるなんて、嫌味かな。本当に意地が悪い人。


「変態でいいよ。名前チャンに触れられるならね。僕は名前チャン自身が芸術だと思うんだ。こんなに綺麗な存在は他に見たことがない。傷の付き方も、治り具合も、全てが絶妙。そんなものが僕のものだなんて、信じられないだろう?あ、君は女の子なんだから大丈夫だよ、背中に傷が付いてたって気にしなくて」


 そう言ってくすくすと笑う。やっぱり。背中を触っていたのもこれを言う為。何もかもが嫌味っぽい。きっと、敵に背を向けるなんて、ってことを言われてるんでしょうけど、わたしだって勝ち目が無かったら逃げるわよ。別に恥とも思わない。勝てない奴に立ち向かって、無駄死になんてしたくないし、もっと効率の良い方法なんて幾らでもあるんだから。


「ただわたしは貴方への忠誠を誓うだけよ」

「ああまた始まった。そこまでの忠誠はいらないって何回言ったら」

「でも忠誠心が無くても殺すでしょ?」


 くるりと寝返りを打って、白蘭の指に触れる。ほら、わたしよりも白く滑らかな肌。骨ばった指、関節。整った顔、表情。そして鋭い光を宿した瞳。


「ほんと、名前チャンにはかなわないね」

「嘘ばっかり」

「嘘じゃないったら」


 わたしは彼の目の下の痣に触れた。


130224

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