「ただいま〜…」

「遅かったね…って、え!?何でずぶ濡れ!?」

「今日は最高さんの誕生日なのに、どうして空が涙してるんだろうって考えてたら、傘落としてた」


 ちょっとコンビニに振り込みに行ってきた帰り、ぼーっとしていて気付けば傘を落としていた。通りすがりの人の視線で気付いて、でも既に冷たくなった身体ではどうでも良くなって、傘を閉じてゆっくりとした足取りで帰ってきた。


「とりあえず、もうそのままお風呂入ってきなよ…」

「それにね、今日は雲の中にいれるから」

「……雲の中?」

「うん、ほら」


 最高さんの腕を引っ張って外へ連れ出した。2月中旬だし、雨も重なって気温はとても低い。ぬくぬくと暖かい部屋にいた最高さんは薄着でお気に入りのボーダーのTシャツ一枚。「寒っ」厚着した筈のわたしも雨が浸してしまったから、貴方と同じように寒いよ。


「霧だね」

「霧って、雲が地面に降りてきてるってことでしょ?だから今、わたし達は雲の中にいるの」


 ね?と語りかけると少しだけ困ったように笑った。寒いという感覚は共有できたけど、この感情は分かってもらえないのね。ロマンチストな彼なら分かってくれると思ったのだけれど。でもきっと、分かってもらえる日がくる。まだまだ時間あるのだから。


「まるで、2人きりみたいだよね」


 辺りが霞んでて、近くのものしか見えなくて、最高さんだけははっきり見えるこの感じが、いつもとは違って。ああ、この為に、この環境を作るために。わたしに2人きりを分からせるために。神様は今日雨を降らせたのかもしれない。


「もうこんなに冷えてる」

「じゃあ最高さんも」

「っ!?冷たっ…」


 指先を触るものだから、ぎゅっと抱きしめて。だって貴方が愛しいから。今貴方がわたしの前にいることが嬉しいから。この2人きりの状況を覚えておきたいから。


「俺の服も濡れちゃったじゃん…」

「じゃあ熱いお風呂、入ろ?」




□□□□
少し遅れてしまいましたが、最高さん19歳のお誕生日おめでとうございます。

130219

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