洗濯大変だなー、こんなに血付いちゃって。黒だからあんまり目立たないけど、でもやっぱり気になる。これは自分の血だ。アクマと戦ったときに出来たもの。斬りつけられて出来た傷がジクジクと痛む。はぁ、一仕事終わった。そんな安堵感がわたしを包む。
わたしの隣ではアレンが清々しい顔をして肩で息をしている。彼もまた、わたしと同じように怪我をしたみたい。…わたしよりは酷くないようだけど。アレンはわたしなんかより戦うのに慣れているから、ね。
ゴーン ゴーン
街一番の大きい時計台が日付が変わったのを知らせている。普段は零時になんか絶対に鳴らないのだけど、クリスマスだけはキリストを祝う為に鐘を鳴らすのだと、任務に出る前にコムイさんから聞いた。
「良い音ですね」
「うん、そうね」
アクマ達が壊した建物にもたれて街に響く音に耳をかたむける。怪我をしているけれど、お互いに立とうとしないのはまだ教団に帰りたくないから、だと思う。冷たい手を、冷え切ったアレンの手に重ねる。
「ねぇアレン」
「はい」
「おめでとう」
「…マナに拾われた日、ですか」
「うん」
それきりアレンは喋らなくなってしまった。寝てしまったのかと思って見てみたけれど、何処か遠くを見つめていて、目はぱっちりと開いていた。
「…僕にとってマナは大切な人です」
「うん」
「名前も」
「え?」
「だから名前と出会った日も、特別な日なんです」
最後に、とっても、と付け足して、アレンはゆっくりと目を閉じた。
ねぇアレン。アレンにとってマナは本当に本当に本当に大切な人だってことはよく知ってるよ。でもマナには劣るけど、アレンの大切な人の一人になれて、すっごい嬉しい。これ以上の喜びは無いってくらい。
──だから、勝手にわたしの前からいなくなったりしないで。
Merry Christmas
□□□□
はい、最後乙。負傷してたってきっと2人の時間を大切にして、その一時一時を愛おしく想うんだろうなぁ。
111225