タンタンタンタン

 軽快なリズムを刻みながら文字入力をしていく。


「あぁっ」


 また間違えた。スマホにしたのは良いけれどなかなか慣れない。思うように操作するのは難しい。もう1ヶ月になるのに。


「っ、くそ!」


 頭の中で適当な文を作りそれを出来るだけ早く入力していく。たったそれだけのことがスムーズに出来なくて苛々を募らせる。たまに固まるスマホに対しても、だ。


「ああもう!」


 後ろへ体を倒すのと同時に、放り投げるとそれはいい感じに跳ねながら遠くへ転がった。
 意味もなく笑みが零れた。


「ねぇ、しないの?」


 廃れた建物の三階、待合室のようなところで同じくして座っているオジサンはそんなことを言った。わたしは愛しのスマホを拾いにかかる。


「しないよ」


 わたしはそうキッパリと断って、また軽快なリズムを弾き始めた。タンタンタンタン。


「ねえゲームなんかしてないでオレと遊ぼうよ」


 あぁもう苛々するなぁ。しないって言ってるじゃない。わたしは今滅茶苦茶一生懸命頑張ってるんだから邪魔しないでよ。
 チラリとも、見向きもせず答えた。


「ゲームじゃないし」

「ゲームでしょ?」

「ゲームじゃない。それに今はそういう気分じゃないの、嫌。ていうかほっといてよ」


 あんたの勝手な都合にわたしを巻き込まないで欲しい。貴方の身体とわたしの身体は違うんだから。わたしにはわたしの都合があるの。因みに今はこのタップを最後まで間違えずに出来るまでこれをやり続けるって決めた。


「じゃあ何で此処にいるの」

「わたしの場所がないからよ」


 分かりきったこと言わないで頂戴。とは言えないけれど、そんな顔でスマホを睨む。
 あー、でもわたしも運が悪いな。寄りによってコイツに会ってしまうとは。しかも他に人がいないとか。


「それ、ゲームだろ」


 思わぬ方向から声がして、そうしたら新しいお客さんだった。


「さっきから見てたけど、自分でルール決めてやってる簡単なゲームなんじゃないの?」

「隠れて見てたの?待ってたよー。さ、行こ」

「は?」

「ちょっと名前ちゃん!?」

「名前は言わないって約束でしょ。次は無いからね」


 ここぞとばかりに逃げ出した、見知らぬ人を出しにして。少し失礼かな、とは思ったけれど、あのままじゃ埒があかなかったし、何よりこの人も結構なイケメンだし。


「名前、なんて言うの」

「俺?」

「そう」

「……結城新十郎」

「…なんて呼べばいい?」

「好きなように」

「じゃあ、新十郎、さっきはありがとう。わたし少し困ってたの」

「それがわかったから出て行ったんだ」

「貴方って優しいのね」


 振り向きもせずにわたしの斜め前を歩く結城。
 と、その前から「新十郎〜!」と声がする。小さな影がふたつ。


「誰!?」

「おい因果!」

「苗字名前と言います」

「名前!僕と遊んで〜!」

「因果!」

「ちぇっ」

「悪いな。家まで送るよ。何処だ?」

「無いの。いっつも野宿って感じ?寝るとこがあれば何処だって寝れるし」

「ウワーオ」

「……俺の家、来るか?」

「いいの!?」


 多分、新十郎の頭の中で多くの情報が駆け巡ったんだと思う。口を開くまでに時間がかかったから。
 さっきまでの人とは違うだろう。なんかそういうように思う。口を開くまでの時間がそれを物語ってる気がする。この人の、この安心感は何だろう?


「と言っても、立ち入り禁止区域だけどな」

「気にしなーい!」

「一緒に住むのですか?」

「どうなの?新十郎」

「俺は別に、構わないけど」


 ありがとう、と言ってもこっちを見ようとしないものだから何だろうと思ったら耳が紅く染まっていた。なんだ、このイケメン、ウブなんだ。

 これから面白くなりそーじゃん。



転んで 堕ちて
こんにちは
「ねぇ、貴女なんでそんな格好なの?新十郎の趣味?」
「違う!」
「わたしが勝手にやってることです」
「ふうん」



□□□□
新十郎書かないって言ってたのにね(笑)まぁ、いっか。住んでるところが立ち入り禁止区域だからね、きっと変なことも狼狽疲弊してるんだろうと思ったのでね。まだ風守が普通の子だと思ってます。R.A.Iだって知る時も書きたかった。けど気力ない。ていうか最近、脳内こんなのばっか。大丈夫か?

111210

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