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「…そうか。忘れてしまったなら仕方ない。…プリム・クウォークだ。」

そう言いながら彼女は右手を差し出した。

「貴女の名前ならさっき―…」

その意図がよくわからなくて口ごもった。

「レギュラスくんが私との関係を忘れてしまったなら,また新しく私との関係を築けば,いい。…だから改めてよろしく,だ。」

そう言いながら微笑む彼女は美しい人だと思った。

僕は戸惑いながらも彼女の右手を握り返した。

「よろしくお願いします…。」

「ああ…これからよろしくな!」

プリムはニカッと太陽のように笑った。




「…あのお尋ねしたいことがあるんですが…」

「なんだ?何でも聞いてくれ!」

プリムはそう言って
目を輝かせた。人懐こい犬のような人だなと思った。

「これからどうするのですか?なにか計画は?」

「ふふふ…何を隠そうノープランだ。でも大丈夫だ!きっとなんとかなる!!」

ノープランなのに,根拠のないたっぷりの自信に,僕は不安感を覚えずにはいられなかった…。本当に大丈夫なんだろうか…?
「…とりあえずマグルに潜伏して暮らす以外はないと思うがな。」

「あの…すみません…マグルとは何ですか?」



…………………………………



刹那―…,時が止まったかと思った。ラジオなら放送事故だ。


「…レギュラスくん,自分が魔法使いだということは覚えてるか??」

「…え,僕が魔法使い!?冗談でしょう!」

「………冗談を言っているのはどっちなんだ。レギュラスくんは魔法使いだ。それも凄腕の。短期間とは言え闇の帝王の右腕だったんだからな。ちなみに私も魔女だ。」

「闇の…帝…王?………何がなんだかさっぱりです…。」

「…とりあえずマグルの説明からするぞ?
マグルとは魔法族ではない者のことだ。魔法が使えない者達のことをそう呼んでいる。

闇の帝王のことは…また追々話そう。
…『"ある人"から逃亡している。』とさっき言ったが,私達は,その"闇の帝王"から逃亡している。たぶん捕まれば…」

「―…命はない?…なんだかすごいことに巻き込まれてるんですね,僕ら。」


記憶がなく,にわかに信じることができないようなことを言われた僕は他人事だった。

「…まぁ,いいです,"闇の帝王"とやらのことは一先ず置いておきましょう。―…で,これから,貴方と二人で暮らしていく訳ですか…?…その…大丈夫ですか?」

「大丈夫って何が??」
きょとんとした表情でプリムは首を傾げた。

「その…若い女性が…記憶喪失の男と二人で大丈夫なんですか?」

「だから,記憶喪失のことは気にしなくていい。レギュラスくんは覚えてなくとも私達は親友だったのだからな!」

「いや…だから記憶喪失のことではなくて
…」

…駄目だ,なんでこうも意思疎通ができないんだろうか。

「…すみません,突然ですが,聞いてもいいですか?」

「ん?ああなんでも答えるぞ?」

「プリムは赤ちゃんはどうやってできるか知ってますよね…?」
………………

やや間があって彼女は答えた。

「…当たり前だ!コウノトリが運んでくるんだろ!」
プリムはぺかぺか顔を輝かせ,自信たっぷりに手に腰までて当てて,えっへん!のポーズをした。

うわ…本当に本気でこんなことを言う人がいるんだな,と呆れを通り越して感心した。

「?しかし…なぜ急にこんなことを?」

「…もう…もういいです。」

彼女は頭に?マークを浮かべて首を傾げてから,こう続けた。

「…それに正確には2人ではないぞ,3人だ。私の屋敷しもべ妖精のルプラがいる。」

屋敷しもべとは何ですか?…―と質問しようとしたその時―…

「プリム様,テントと張り,テントの周辺一帯に防衛呪文をかけ終わりました。」

「噂をすれば,だな。」

「…何ですか…!?この生き物は…!」

大きな耳に,大きな目玉,尖った鼻にみすぼらしい格好…

「…今言った屋敷しもべ妖精だ。言わば,魔法使いの家の召し使いのようなものかな。…召し使いと言ってもルプラは私の家族のようなものだ。レギュラスくんと言えどルプラを侮辱するようなことがあれば,私は怒るからな。」

「…プリム様…!レギュラス様は…記憶が―…?」

「ああ記憶を失くしているようだ。」


「…屋敷しもべ妖精…?……うっ……痛…!…」

突然頭に激痛が走った。頭が割れるように痛い。意識が朦朧とする。

「「レギュラスくん(様)…!」」

プリムとルプラが僕の名前を呼んだ。

その他にもう一人…別のルプラとは別の『レギュラス様!』と呼ぶような叫ぶような声がどこかで聞こえた気がした―…。

to be continued.

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